『アンネの日記』 2015年3月 (100分 de 名著)

アンネの日記は、結構ボリュームがあって、なかなか通読できずにいるのですが(いずれは通読するつもりですが)、戦後70年の今年が終わるに当たり、アンネ・フランクやその周辺の人々に関心を持ちいろいろと読んでいる中で、本書に行き当たり、読みやすさもあって通読しました。
著者には他にもアンネ・フランク関係の著書があり、それだけに理解が深く、アンネ・フランクの生と死、その周辺や背景を考える上での良書だと思いました。
いろいろと読んでいて感じるのは、アンネ・フランク一家や一緒に隠れ住んでいた人々を支えていたのは、単に関係者であったというだけでなく、歴史的に自由を希求してきたオランダ国民、アムステルダム市民であったということでした。オランダでは、ナチスドイツによる占領後に、ユダヤ人強制収容、移送に抗議して「2月のストライキ」と呼ばれる大規模なストライキが起き、その後もロンドンの亡命政府の指示の下でゼネラルストライキが行われていますし、様々な草の根のレジスタンス運動でナチスドイツにしぶとく抵抗し、ユダヤ人を匿う組織的な活動がかなりの規模で展開され、万単位のオランダ人の活動により万単位のユダヤ人が匿われ生き延びています。アンネ・フランクらは、不運にも生き抜くことができませんでしたが、必死に生きようとした人々、それを危険を顧みず支援した人々を象徴する存在といってよいでしょう。今までの私はそこまで目が向けられていませんでしたが、いろいろと読む中で、そこに目が向けることができるようになったのは収穫であったと感じています。
アンネ・フランク一家の隠れ家生活を支援したミープ・ヒースは、その著書

思い出のアンネ・フランク (文春文庫)

思い出のアンネ・フランク (文春文庫)

の中で、

「わたしはヒーローではない。たんに、あの暗い、恐ろしい時代に、わたしと同じようなことをした、あるいは、もっと多くのことをした良きオランダ人たちの、長い、長い列の端に連なっているにすぎない。」

と述懐していますが、そのことを、改めてしみじみとかみしめています。