偽計容疑での告発検討 オリンパス問題で証取委

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201111130079.html

オリンパス損失隠し問題で、証券取引等監視委員会は、巨額の企業買収など不透明な取引について、実際には表面化していない損失を処理する目的だったのに、虚偽の情報で市場を欺いた疑いがあるとして、旧経営陣と損失隠しに加担した社外関係者に金融商品取引法違反(偽計)容疑を適用して刑事告発する検討を始めたことが12日、分かった。

一方、同社が過去の決算を訂正した場合、法人としては虚偽記載容疑での刑事告発は見送り、行政処分である課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告する方向で検討しており、東京証券取引所による上場廃止が回避される可能性もある。

偽計取引は、現行の金融商品取引法158条で、

何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等(有価証券若しくはオプション又はデリバティブ取引に係る金融商品(有価証券を除く。)若しくは金融指標をいう。第168条第1項、第173条第1項及び第197条第2項において同じ。)の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。

とされ、違反に対する罰則は、同法197条1項5号で、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する、とされている犯罪ですね。旧証券取引法当時から規定はあり、ライブドア事件でも偽計取引が問題になっていました。
企業買収を行った点を、偽計取引として問題にすることにより、会社法上の特別背任罪(取締役等が自己または第三者の利益を図り、あるいは会社に損害を加える目的で、任務違背行為を行い会社に損害を与えた場合に成立)も併せて捜査の対象にすることができることになるでしょう。
ただ、仮に、有価証券報告書虚偽記載罪が課徴金処理され、刑事事件としては立件されず、しかも上場廃止にもならない、ということになると、かくも長年にわたり市場等を大きく欺いておきながら、その点が課徴金納付で済まされ、金で片づけられる、ということになり、特に、ライブドア事件の際の峻烈な処理(ライブドア上場廃止)と比較して、公平性等の点でいかがなものか、ということを素朴に感じます。おそらく、同様の、釈然としないものを感じる人は少なくないでしょう。
悪いことをする際には、こじんまりとではなく、思いきり、大きくやったほうが、かえって処分が軽く済む、それなら思いきり大きく悪事を働いたほうが良い、といった、悪しき前例になり、日本に対する信頼失墜につながらないかと、心配になります。