東芝、不正1千億超でも“甘い”処分?ライブドアは“たった”53億粉飾で経営陣逮捕

http://biz-journal.jp/2015/07/post_10896.html

金融商品取引法上の「重要事実の虚偽記載」に対しては、刑事罰までいかなかった場合でも、行政上の課徴金制度が存在する。連結経常利益が数百億円規模だったオリンパスは、約900億円の含み損を計上しなかったことで刑事罰を受けた。一方、連結経常利益が約590億円のところを約780億円と記載した日興コーディアルグループは課徴金処分にとどまっている。
証券取引等監視委員会は、すでに金融庁に対して東芝に課徴金処分を課す勧告をすることを検討しているから、これがなされる可能性は高い。東芝のケースがライブドアと同じく刑事罰まで行き着くかどうかは、重要性の観点から他の事例と比較して最終的に決まることになるだろう。

刑事事件としての立件可能性という観点で見ると、赤字であるのに黒字を装う、といった、黒を白にするような粉飾のほうが、経営陣のトップまで「虚偽」という認識(故意)を持っていたことや、そのような認識、故意を経営陣の中でも共有していた(共謀)ことを立証しやすいと言えるでしょう。経営者は、常に、利益が出ているか、損失が出ているかについては敏感に見ているもので、そこを知らなかった、把握していていなかった、という弁解は通じにくいものです。
それに対して、一定の事象の評価によっては黒字方向、赤字方向で数字が変わってくるものが問題になっていたり、黒字、あるいは赤字であるけれどもその金額が過大、過小になっているような場合、わかりやすくいうと、真っ黒を薄めの黒にするとか、レッドを赤っぽいオレンジにするとか、そういうケースは、そして、特にそれが巨大な会社の中で行われていると、経営陣が、どこまで虚偽という認識、故意を持っていたのか、立証はなかなか難しくなりがちです。虚偽とは思っていなかった、法的に可能な範囲内で評価を工夫してほしいと思っていただけだ、といった弁解が出た場合、それが単なる弁解に過ぎなくて、虚偽であるという十分な認識、故意があったと立証するのは、そういう状況においては困難になりがちです。
証券取引等監視委員会は、既に東芝への調査に入っていて、刑事事件として本格的に立件し、東京地検が告発を受けて起訴までしてくれるような証拠関係かどうか、かなり慎重に検討している可能性が高く、報道で漏れ伝わってくる、告発までは困難で課徴金処理、というのは、上記のような刑事事件での実情を踏まえたものである可能性が高いでしょう。ただ、そうした方針が、多くの国民の納得を得られるものであるかと言えば、粉飾金額が巨額に及ぶだけに、かなり難しいのではないかと思われるものがあります。
とはいえ、ライブドアはたった53億粉飾で経営陣逮捕なのに、といった、過度にジャーナリスティックな、扇情的な見方は建設的なものとも言い難く、証拠の評価を難しさや、とは言え国民感情に沿った、適正な処理でなければならないという要請の狭間に、今の当局はいるという見方で見て行く必要はあると思います。