前訴の建造物侵入、窃盗の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因との間には公訴事実の単一性がなく、前訴の確定判決の一事不再理効は後訴に及ばないとされた事例

最高裁第二小法廷平成22年2月17日決定ですが、判例時報2096号152頁以下に掲載されていました。
事件が、やや複雑な経過をたどっていますが、前訴(Aとします)と後訴(Bとします)が相次いで起訴され、当初は弁論が併合されていたのが弁護人の請求により分離され、Aが有罪になった後、Bが、Aとの関係で一罪に関係になり一事不再理効が及ぶのではないかが問題になりました。
一審判決は、Aでの建造物侵入とBでの(起訴されていない)建造物侵入行為が一罪(包括一罪)の関係に立つ可能性を認めつつも、Bでの訴因外の事実を考慮するのは相当ではないとして、一事不再理効を認めずBで有罪としています。
二審は、結論として公訴棄却としつつも、放火行為についてAの際であった可能性ができないとしつつ(AとBを一罪とし公訴事実の単一性を肯定)、弁護人が弁論分離を請求しながら後になって一事不再理を主張するのは権利の濫用である、AとBは本来的には別罪であるなどとして、一事不再理効を認めませんでした。
その上での最高裁決定ですが、本決定では、基本的に1審判決と同様の判断が示され、1回目の侵入と2回目の侵入は包括一罪とは言えない(新たな犯意により2回目の侵入が行われた)と認定されています。
判例時報のコメントでも指摘されていますが、控訴審の判断は、かなり理解に苦しむもので、最高裁による是正は妥当という印象を受けます。また、この点も判例時報のコメントで指摘されていますが、こういった妙な論点が生じてきたのは、1審が一旦は併合していた弁論を分離し公訴事実が単一の可能性があるAにつき先に判決を宣告するという、これまた理解に苦しむ措置を講じたことにあり、1審の訴訟指揮の在り方にもかなり問題があったと言えるでしょう。
こういった、1審、2審で紆余曲折を経た経過が、最高裁の決定できれいにまとまりました、という結果ですが、それが証拠関係に照らし真に妥当なものかどうかはわかりません。