単独犯の訴因で起訴された被告人に共謀共同正犯者が存在するとしても、訴因通りに犯罪事実を認定することが許されるか(積極)

最高裁第三小法廷平成21年7月21日決定ですが、判例時報2096号149頁以下に掲載されていました。
決定では、

検察官において共謀共同正犯者の存在に言及することなく、被告人が当該犯罪を行ったとの訴因で公訴を提起した場合において、被告人一人の行為により犯罪構成要件のすべてが満たされたと認められるときは、他に共謀共同正犯者が存在するとしてもその犯罪の成否は左右されないから、裁判所は訴因どおりに犯罪事実を認定することが許されると解するのが相当である。

という判断が示されています。
「被告人一人の行為により(単独犯の)犯罪構成要件のすべてが満たされたと認められるとき」は、他に共謀共同正犯者がいたとしても、故意を持って実行行為を行った、という限度では被告人の行為は単独犯として十分成立しますから(共謀共同正犯者との関係では、共同実行の意思という、一種の過剰部分を検察官が「呑んで」起訴していると見得る)、最高裁の判断は妥当ではないかという印象を受けました。