番組のネット転送は「違法」=著作権侵害認める―テレビ局実質勝訴・最高裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110118-00000109-jij-soci

番組送信の主体が、機器を購入した利用者か、管理した業者かが争点となったが、第3小法廷は、「機器が公衆用の電気通信回線に接続され、継続的に情報が入力される場合には、情報入力者が送信主体となる」との初判断を示し、入力設定していた永野商店が送信主体と認定した。

最高裁のサイトに判決文がアップされていたので一通り読んでみましたが、

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110118164443.pdf

これはいかがなものか、という印象を抱いたというのが率直なところですね。
判決では、

公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

と、原審までの判断と真っ向から反する判断を示した上で、

自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

という判断を示し、本件にあてはめ、まねきTVを送信の主体であるとしています。
1つの評価と言えばそれまでですが、本件で問題となったロケーションフリーの仕組み(判決中でも紹介されていますが)が、利用者が単独で使用する際には自動公衆送信装置にならない(そのことは最高裁も認めている)のに、「当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは」、突如として自動公衆送信装置になるという、その前提にそもそも疑問がある上、どういった場合が「当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるとき」に該当するかについて、上記のような理由で、まねきTVのような関与者を送信主体と認定し、そのような送信主体との関係では、利用者は「公衆」にあたるから、自動公衆送信を行う装置は自動公衆送信装置になる、と結論付けています。
いわゆるカラオケ法理の適用、ということにもなると思いますが、本人が自ら自分の手足を使って行わなければ本人が主体とは言えない、そういう意味で本人が主体とは言えない(言いたくない)状況下でそこにビジネスとして関われば関わった者が送信主体になるという、まず結論ありきの、倒錯した論理という印象を強く受けます。
今後、この判決について、賛否両論が出ると思いますが、このような、著作権に配慮された機器まで、使い方が悪い(?)からと自動公衆送信装置扱いされてしまうようでは、創意工夫の余地もなく、利用者にとっては不便極まりないでしょう。そのような状況下で、結局、利用者から見放されるのは、一見、手厚く保護されたかに見える権利者ではないか、ということについても、今後、おそらく議論されるのではないかという気がします。

追記(平成23年4月18日):

判例時報2103号124頁(最高裁第三小法廷平成23年1月18日判決)