シンドラー側、16日起訴 東京・港区のエレベーター事故

http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071501001196.html

地検は、シンドラー社側が事故前の点検で確認した不具合情報を開示しなかった点などを重視。重大な事故を招く恐れを予見できたのに、十分な安全対策を怠ったと判断した。
構造上の欠陥が見つからないまま事故から丸3年がたち、世界第2位の昇降機メーカー側の刑事責任も問われる異例の展開となった。

今年3月の事件送致の際に、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090330#1238373852

とコメントしましたが、特殊業過の否認事件にしては、かなり迅速に処分が決まったという印象を受けます。特にシンドラー社の刑事責任については、難しさを感じますが、東京地検は難しく考えず単純明快に割り切ってしまっているのかもしれません。
しかし、そういった単純明快な割り切りで起訴されたとしても、公判でも単純明快に割り切ってもらえるかどうかは何とも言えないでしょう。
最近の判例で、薬害エイズ事件における厚生労働省の課長の不作為に業務上過失が認定されたケースがありますが、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080305#1204674857

有罪認定の根拠として、

1 単なる予見可能性

だけでなく、

2 危険性の認識が関係者に共有されておらず、医師や患者がHIVに汚染されたものか見分けて感染を防ぐことも期待できなかったこと
3 国が明確な方針を示さず、取り扱いを製薬会社に委ねれば、安易な販売や使用が現実となる具体的な危険があったこと

が挙げられていて、不作為というものが、安易な過失競合論により、過度に広範囲に過失に取り込まれてしまうことを防止しようという姿勢も見て取れます。
同様の問題は、最近、JR西日本の社長が起訴された福知山脱線事故にもあって、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090709#1247099049

東と西で、過失犯の刑事責任をどう考えるかについて今後に大きく影響しそうな事件が、奇しくも同時期に起訴された、という見方もできそうです。