体罰賠償訴訟:児童側敗訴の逆転判決 最高裁

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090428k0000e040036000c.html?inb=yt

教員の行為が、学校教育法で禁じる体罰に当たるかどうかが争われた民事訴訟で初めての最高裁判決。「目的、態様、継続時間等から判断する」と一定の基準を示しており、教育現場に影響を与えそうだ。
判決などによると、教員は02年11月26日、休み時間に自分のおしり付近を2度けって逃げようとした男児の洋服の胸元を右手でつかんで体を壁に押し当て、大声で「もう、すんなよ」と怒った。
1、2審判決はいずれも「教育的指導の範囲を逸脱している」と認定したが、小法廷は「悪ふざけしないよう指導するためで、罰として肉体的苦痛を与えるためではない」と目的の妥当性を指摘。さらに時間にして数秒の出来事だったことも踏まえ「やや穏当を欠くが、違法とは言えない」と結論付けた。5人の裁判官全員一致の判決。

最高裁のサイトにアップされた判決文も読んでみました。
学校教育法では、

第11条
校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

とされていますが、最高裁が判断を示した上記事件で問題となった行為については、体罰かどうかということと、体罰にはあたらないとした場合に(体罰であれば直ちに違法となりますが)教育現場における教師の児童に対するどういった行為が違法となるかということの、2つの問題を含んでいたのではないかと思います。
上記の規定は、あくまで「懲戒」の一環としての体罰というものを想定し、それを禁じているもので、教師と児童等との間の肉体的な接触があった場合を、すべて体罰とは言えないでしょう。本件で問題となった行為は、最高裁が言うように、「罰」を与えたのではなく、指導のため行われたと見るのが自然と私も思います。
ただ、体罰でなければ何をしても良いか、というと、そういうものでもないはずで、そこは、社会通念にも則りつつ、違法性の有無を判断する必要があるでしょう。最高裁の判断は、体罰とは言えない行為について、その違法性を実質的に判断し、「その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく」としていて、そこには妥当性が感じられますが、その判断を、「体罰ではない」ということとストレートに結びつけてしまったことで、概念の混乱を招いているのではないかという印象を受けます。
体罰とは言えない教育的指導でも、有形力を行使した場合にそれが違法とされないものは、かなり限定されるはずで(その意味で、本件はかなりレアなケースでしょう)、その意味で、この判決について、一定の有形力を体罰として加えることが許される場合がある、と解釈するのは、かなり問題があるのではないかという印象を受けます。そういった誤った解釈を招いてしまう原因は、最高裁の判決文が、体罰かどうかという問題と、教育的指導として許される範囲はどこまでかという、本来、分けて考えるべき問題を、まとめて書いてしまった点にあるのではないか、という印象を強く受けます。