催涙スプレー携帯で逆転無罪 最高裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090326-00000590-san-soci

軽犯罪法は「正当な理由なく刃物や鉄棒その他、人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」を罰すると規定している。裁判を通して、争点は催涙スプレーの携帯に「正当な理由」があったかどうかだった。
男性は会社で経理を担当しており、現金などを持ち歩く必要があるため、護身用にスプレーを購入。平成19年8月26日未明、運動不足を解消しようと、スプレーをポケットに入れてサイクリングしていた際、東京・新宿中央公園付近で警察官の職務質問を受け、在宅起訴された。
同小法廷は「正当な理由」について、「職務や生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合」と判示。器具の用途や性能、職業や携帯の動機などを総合的に判断するべきだと指摘した。男性が深夜の外出時、万一に備えて小型のスプレーを携帯したことは「正当な理由」にあたると判断した。

今後、「自分の身は自分で守る」という意識が高まり、一層、催涙スプレーなどの護身グッズに注目が集まる可能性もあるが、26日の最高裁判決はあくまで、今回の男性の場合は軽犯罪法違反に当たらないという個別の判断だ。
甲斐中裁判長は「男性には前科もなく、万一に備えて、スプレーを携帯したもので、護身以外の意図はなかった」と説明。その上で、「防犯用品として製造された催涙スプレーでも、犯罪や不法行為の目的で持つことは『正当な理由』とはいえず、必要性もないのに、人の集まる場所などで携帯することは『正当な理由』がないと判断されることが多いと考える」とくぎを刺した。スプレーを携帯する際には「正当な理由」があるかどうか、十分留意する必要がありそうだ。

最高裁で、軽犯罪法の「正当な理由」が問題になること自体、かなり稀であるはずで、社会生活の中で問題になりやすいタイプのこの種行為について最高裁の判断が示された意味は小さくないでしょう。
ただ、最高裁の示した基準に照らしても、正当な理由があるかどうか判断が微妙なケースは、今後、かなり出てくるはずで、警察に聞いても、おそらく答えてはくれないはずですから、この問題(護身用に誰が何を持ち歩くのが適法であり違法か)の根本的な解決には程遠いということにはなりそうです。
なお、正当な理由がないのにあると勘違いして軽犯罪法規定の物をも持ち歩いた場合、いわゆる法律の錯誤として、故意は阻却されないと判断される可能性が高いでしょう。それだけに、この問題には難しさがつきまといます。