http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081128-00000500-san-soci
弁護人はさらに、家宅捜索が実施される場合でも弁護人を立ち会わせるよう府警などに求めるとともに、地裁舞鶴支部には押収物の証拠保全を申請。対象物として、凶器となり得るもののほか、体毛などの微物も含めており、捜査手法について「窃盗容疑で逮捕された段階で捜索が行われており、(殺人、死体遺棄容疑での再捜索は)明らかに不自然」と強く批判した。
ただ、特別抗告の申し立て段階では捜索の執行を停止させる強制力はなく、捜査本部は、抗告の行方にかかわらず捜索を行う方針を固めた。ある府警幹部は「最終的に許可を得て捜索、検証ができるのであれば、捜査上本質的な影響はない」と指摘した。
刑事訴訟法では、裁判所による捜索・差押について、
第113条
1 検察官、被告人又は弁護人は、差押状又は捜索状の執行に立ち会うことができる。但し、身体の拘束を受けている被告人は、この限りでない。
2 差押状又は捜索状の執行をする者は、あらかじめ、執行の日時及び場所を前項の規定により立ち会うことができる者に通知しなければならない。但し、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示した場合及び急速を要する場合は、この限りでない。
3 裁判所は、差押状又は捜索状の執行について必要があるときは、被告人をこれに立ち会わせることができる。
としていますが、第113条は、捜査に関する第222条で準用されておらず、捜査段階の捜索・差押について、被告人、弁護人には立会権が認められていません。刑事訴訟法上、「捜査密行の原則」ということがよく言われますが、捜査は、真相解明のため、また関係者のプライバシー等を保護しつつ秘密裏に行われるべきであるというのが建前で、そういった意味で、捜査段階ではそのような取り扱いになっていものと思われます。
ただ、では、被告人や弁護人に立ち合わせてはならないか、というと、禁じる規定もなく、上記のような弊害が認められないような場合に、立会を認める、という対応もあって良いのではないかと思います。過去の、例えば冤罪ではないかと言われている事件では、証拠品発見、押収の経緯が不自然で警察による何らかの作為が介在したのではないかという疑惑が長く指摘されているものもあって、特に弁護人の立会を認めることで、そういった疑惑が生じることを封じる、という効果も期待できるかもしれません。
なお、上記事件の弁護人は、「押収物の証拠保全」を請求したようですが、刑事訴訟法では、
第179条
1 被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。
2 前項の請求を受けた裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
という規定があり、被告人、被疑者、弁護人が、独自に、裁判所を通じて証拠保全を行うことが認められています。ただ、通常、この規定で証拠物の押収を求める場合、捜査機関が押収していないが証拠保全の必要性が高いといった物について行われるのが通常で、捜査機関による押収物の証拠保全、ということになると、「あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情」ということに疑義が生じる可能性はあるような気がします。裁判所がこの点についてどのように判断するのか、興味を感じます。