「NTTの自縛 知られざるNGN構想の裏側」

NTTの自縛

NTTの自縛

日経コミュニケーションの、このシリーズはなかなか興味深いものがあり、大体読んでいますが、これもおもしろい1冊でした。
NGN(次世代ネットワーク)について、技術には素人の私としても、「一体、新たに何ができるのだろうか?」という疑問が前からありましたが、その辺の裏事情について、この本にはいろいろと書いてありました。とりあえず、あわてて利用する必要はなさそうです。
特に興味深いと感じたのは、著者が、NTTの自縛の理由として、繰り返し「電話的価値観」ということを指摘していることでした。
電話的価値観とは、同書によれば、

1 国内通信機器メーカーと組んで、NTT自らが信頼性の高い交換機を開発する「自前主義」
2 交換機で信頼性の高い電話ネットワークを構築した後は、計画に従って維持し続けることを重要とする「計画を重視するマインド」
3 NTTの都合でインフラを高度化してもコストを回収できるという電話ビジネスから生まれた「プロダクトアウト的思考」

であるとされていて(42ページ)、なるほど、とうなずけるものがあります。
そして、著者は、NTTの問題点として、

何かの節目で現場がユーザー視点で新しいサービスを開発する。「自由にやらせてみよう」という時期と合えば、そのタイミングで斬新かつユーザーが欲しがるような新サービスが出る。最初はリスクをとりたくない電話的価値観を持つ上層部が黙っているため、その事業は電話文化とは違った流れでサービス開発やマーケティング、販売活動が行われ、ユーザーに受け入れられる。しかしそのよき時代が過ぎて事業が巨大化し始めると、遠めで見ていた電話的価値観を持つ人たちが手柄を立てるために介入。これまでの開発のペースや勝手が変わってしまいギクシャクすることになる。
(99ページ)

と喝破し、NGNについても、そのような傾向の中で様々な問題点が噴出し、その前途は相当多難であることを明らかにしています。
NGNが、「NG」N(NGが出てしまうネットワーク)のように思えてきますが、NTTやNGNの今後を真面目に考える上で役立つ1冊ではないか、という印象を受けました。