東京高裁、存在不明確な警察官メモを開示命令

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071214/trl0712141936007-n1.htm

弁護側は、被告が自白調書の内容について否認していることから、「調書の任意性を否定する内容が記されている可能性がある」として、警察官が調書を作成した際に書き留めた可能性のあるメモの開示を東京地裁に請求した。
同地裁は請求を棄却したが、弁護側の即時抗告申し立てに対し、東京高裁が11月8日に開示命令を決定した。
東京高裁は「警察官は取り調べの際、メモを取ることが義務づけられている」と指摘、「手持ちの証拠には弁護側の指摘するようなメモは存在しない」との検察側の主張を退けた。その上で「検察官がメモを捜査記録に入れなかった場合に、重要な証拠が開示されなくなる」と判断し、開示を命じた。

従来の証拠開示に関する議論は、「検察官手持ち証拠」について論じられてきたという側面があると思います。検察官手持ち証拠ですら、全面開示は認められていない状況下で、手持ち以外の証拠(警察にはあるが検察庁には送られていないなど)までは、理論的にはともかく、実務的には、開示の議論が進まない、という面もあったのではないかと思います。
しかし、現在、警察官に、上記のような義務があるのは事実であり、そのようなメモがたまたま検察官の手元にないから、と言って証拠開示の対象にしないのは、確かに、バランスを欠いており、検察官の手元にはなくても、それ以外のどこかに確実に存在し(少なくとも存在する蓋然性が高く)、検察官が容易に入手できる証拠は、検察官手持ち証拠と同視して、開示の対象に含める、という解釈は、十分成り立ち、また、そのような解釈が望ましいのではないかと思います。
検察庁は、今後の証拠開示に関する影響を考慮(憂慮?)してか、特別抗告までしているようですから、最高裁の判断が注目されるところです。