米国マネーロンダリング―米国財務省・IRS‐CI捜査 基礎研究

米国マネーロンダリング―米国財務省・IRS‐CI捜査 基礎研究

米国マネーロンダリング―米国財務省・IRS‐CI捜査 基礎研究

霞が関弁護士会書店で見かけたので、早速、購入して、少し読んでみました。
著者は、旧大蔵省、国税庁出身の研究者であり、米国におけるマネーロンダリング対策や実際の摘発事例などが詳しく紹介されていて、この分野については参考になる一冊だと思います。
著者は、日本のマネーロンダリング対策が、「金融機関を通じた」ものに偏っており、不十分であって、今後は、組織犯罪だけでなく地下経済や脱税等を含む広範囲において実績を上げている米国に倣い、国税庁を法執行機関の主軸に据えるべきである、と主張していますが(298、299ページ等)、国情も異なり、なかなかそういった方向には進みにくいのではないか、という印象を受けました。
マネーロンダリング対策の必要性、重要性は、私自身、強く認識していますが、著者に、マネーロンダリング対策というものが、同時に、国民のプライバシーや利便性等に大きく影響するものであり、内容によっては多大な犠牲を強いるものでもあって、「国際的な流れだから」「米国もやっているから」というだけで進められるものではない、という感覚が欠落しているように感じられるのは残念に思いました。この辺は、役人出身者の限界かもしれません。
とはいえ、手元に置いておくことで、役立つ一冊であることは間違いないと思います。