「弁護側求刑」を検討=厳罰化への歯止め狙う−裁判員制度で日弁連

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060502-00000137-jij-soci

ボツネタ経由で知りました。

各地で裁判員制度の模擬裁判を行う中で、裁判員役になった参加者から「なぜ弁護側は量刑を示さないのか」「一方からの求刑だけでは判断しにくい」などの意見が寄せられた。 

現在の刑事裁判で、被告人として、まず関心が高いのは(真剣に無罪を争っている事件ではそこが最大の関心事ですが)、執行猶予がつくかどうか、でしょう。弁護人としても、法律上、執行猶予がつく余地があれば、最大限、そこを狙って弁護活動を行います。執行猶予がつけば、主刑自体が多少重くても、よかったよかった、ということになりがちです(後に、再犯等により執行猶予が取り消されると、問題が顕在化するわけですが)。
執行猶予を付し得ない事件では、刑期や罰金額等が関心事になりますが、弁護人が求刑を行う場合の最大の問題は、網羅的な量刑資料を持っていない、ということでしょう。現状のまま、弁護人が求刑を行えば、「こういう短い刑期、少ない罰金になればいいな」という、単なる「願望の表明」になってしまう可能性が高く、自然と廃れてしまうのではないかと推測します。
裁判員制度導入にあたり、最高裁が、裁判員が量刑データベースを参照できるようにする、という報道を見た記憶がありますが、それを弁護士も見ることができれば、弁護人求刑も説得力を持ってくる可能性があります。ただ、検察官が、検察庁内の求刑基準や量刑動向を踏まえて求刑を行い、裁判員も量刑データベースに接することができるという状態の下で、敢えて、わざわざ弁護人求刑を行うことに、どれほどの意味があるのか、という議論も生じそうな気がします。

追記:

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041204#1102121933
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041204#1102170935

量刑に関するデータベースを作成する場合、肝心なのは、各データの中で、単に犯罪事実と求刑、量刑を記載して羅列するのではなく、諸情状を的確、簡潔に記載しておくことでしょう。
検察庁の場合、判決が出ると、裁判結果票(といった表題だったと思いますが、やや違った名前だったかもしれません)というものを作成し(法廷で、立会検察官が、判決の際に下を向いて何やら書いているのがそれです)、その中に、立会検察官が、諸情状を的確(ではない場合もありますが)、簡潔に記入しているので、後から引っ張り出して見た場合、かなり参考になる内容になっています。検察庁内で、データベースなり、量刑資料なりを作成する場合、この結果票が元になっているはずです。
弁護人の場合、組織で動いているわけではない上、それぞれのスキルが相当異なるので、自前でデータベースを作成しようとすれば、大変な労力を要し、使えるものができるかどうかはわかりません(私自身はかなり悲観的です)。
やはり、ここは、裁判所が作成したものを、検察庁だけでなく弁護人も裁判員も平等に使える、ということにして、「ミサイルと竹槍」にならないよう、情報を共有し不公平が生じないようにすべきでしょう。