被告「歯ブラシ買えず」=物品授受禁止で行き過ぎ−地裁決定を取り消し・東京高裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051116-00000179-jij-soci

ボツネタ経由。
刑事訴訟法上、接見等禁止については、

第81条
裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な埋由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第39条第1項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

と定められています。刑訴法をご存知の方には言うまでもないことですが、「第39条第1項に規定する者」、すなわち弁護人との接見等は禁止できません。対象はそれ以外の人々との間の接見等ということです。
ただ、接見等禁止をそのままつけてしまうと、糧食(食料ですね)以外の物が幅広く対象になることにより、被疑者・被告人が、衣服とか歯ブラシ、といった、授受を認めても罪証隠滅等の恐れが認定しがたい物まで入手できなくなり、非常に困ったことになります。それで、一般に、裁判所では、接見等禁止決定書の中で、定型的に「日用品は除く」「生活用品は除く」(表現はそれぞれの裁判所で様々ですが)といった文言を入れておく場合が多いと思います。上記のニュースの被告人も、第1回公判までは、東京地裁刑事14部(令状専門部)により接見等禁止が付されていたはずで、同部の決定書で、歯ブラシ等は入手できる状態になっていたと思われます(起訴後の接見等禁止については「第1回公判まで」という期限が付される場合が多いです、期限を切ることで、接見等禁止の継続の必要性を改めて判断しようという配慮によるものでしょう)。
それが、審理を担当する部により第1回公判後に改めて出された接見等禁止決定では、上記のような文言が飛んでしまい(理由は不明)、抗告を受けた高裁が是正した、というのが、上記のニュースで紹介された事件ということになると思います。
裁判所が接見等禁止決定を出す際には、漫然と出すのではなく、既に出ていた決定があればその内容をよく見て、初めて出すのであれば事件の内容や常識をよくわきまえて、歯ブラシ程度の物が授受できなくなるような決定にならないように注意すべきでしょう。