注釈刑法第1巻

注釈刑法 第1巻(1条?72条) (有斐閣コンメンタール)

注釈刑法 第1巻(1条?72条) (有斐閣コンメンタール)

古いほうの注釈刑法は、特に、検事に任官した後の数年間、一般の刑事事件を多数取り扱っている当時は、よく引っ張り出して読んでいたものでした。その後、大コンメンタール刑法という、より詳細な、より新しい注釈書が出て、そちらを使う機会が増えましたが、注釈刑法の、内容の濃さや深みは他に代え難いものがあって、改訂版が出なかったことが残念に思われたものでした。
新しい注釈刑法は、改訂版ではなく内容は一新されていますが、古い注釈刑法よりもページ数をよりコンパクトにして(全3巻)、読みやすく手に取りやすくなっているようであり、私のようなしがない弁護士でも参照する機会は増えるでしょう。
今後、全巻がそろうのが楽しみです。

2010年12月25日のツイート

厚労省文書偽造の検証報告書要旨

http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010122401000747.html

(3)特捜部の独自捜査事件では、主任検事は上司や高検にすべての証拠書類、主要証拠物の写しを提出。証拠上の問題点や検討結果を報告する。
(4)特捜部の独自捜査事件では、主任検事を総括的に補佐する検事を配置。消極証拠や証拠上の問題点を主任検事だけでなく上司にも報告する義務を負わせる。
(5)特捜部の独自捜査事件で部長・副部長は、当初の見立てに固執せず、証拠に基づき変更し、引き返す勇気を持って、捜査からの撤退も含め適切な指導や決裁の在り方を周知徹底する。

(3)は、口で言ったり文章で書くとこの程度で終わってしまいますが、「上司や高検」は、膨大な証拠書類や証拠物を、主要なものだけでも、と言っても目を通せるんでしょうか。現実問題としてとても無理でしょう。
また、(4)の「統括補佐検事」も、ラインの部長や副部長、主任検事などが猛然と突き進む状況(よくあることですが)で、どれだけブレーキ役になれるかはかなり疑問です。
さらに、(5)も、現状のように、結果を出して実績を残したい、仕事のできる検事という評価を積み上げ組織内で栄進したいという野望にまみれ切った人々があちらこちらに掃いて捨てるほどいる状況で、「引き返す勇気を持ちましょうね。撤退すべき時には撤退しましょうね。」と、いくら言っても、どれほどの実効性があるかと言えば、気休めにもならないでしょう。
戦時中のインパール作戦では、ごく一部の指揮官の野望や独善によりあまりにも無謀な作戦が推し進められ多数の死傷者(その多くは餓死者)を出し、師団長の抗命、独断撤退という日本陸軍史上類を見ない異常なことすら起きましたが、組織の在り方を根本的に改めなければこういうことが起きてしまうものであり、日本陸軍が徹底した改革が行えないまま終戦、終焉を迎えたように、この程度の検証結果でお茶を濁しているようでは、検察庁終戦、終焉(国民から完全に見放され立ち行かなくなるという意味での)も遠くはないでしょう。

冤罪足利事件―「らせんの真実」を追った四〇〇日

冤罪足利事件―「らせんの真実」を追った四〇〇日

冤罪足利事件―「らせんの真実」を追った四〇〇日

下野新聞社からいただきました。ありがとうございました。私が取材を受け下野新聞に掲載された記事の部分も、本書で掲載されています(217頁から219頁)。
少し読み始めていて、年末年始に読み通したいと思っていますが、さすがに事件があった地の地元の新聞社によるものだけあって、足利事件の全貌がわかりやすく紹介されています。読みながら、再審無罪判決が出て、これは確かに1つのゴールではあるものの、ここから新たなスタートを切らなければならない、日本国民がより良い刑事司法制度を持つための貴重な教訓としなければならないという印象を、改めて持ちました。日本テレビの清水記者が繰り返し指摘しているように、足利事件は、真犯人による、連続幼女誘拐殺害事件の一環として行われた可能性が極めて高いものですが、真犯人が捕まらないままでいることの深刻な問題性も、引き続き強く指摘されなければならないでしょう。

警視庁公安部長を更迭へ、テロ捜査資料流出

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101226-00000504-san-soci

警察当局は、秘匿資料について公安部内で不適切な情報管理が常態化していた疑いがあるとみている。
一連の事件では、諸外国の関係機関からの通報内容も漏洩(ろうえい)するなど、インテリジェンス(情報活動)の重大なルール違反が生じた。このため、流出元を特定できていない段階でも、公安部長の責任を問う必要があると判断。海外の情報機関との関係修復を図るためにも更迭は不可避との見方に傾いたもようだ。

私が、外国の情報機関の責任ある地位にいたら、実務もわからない警察キャリア出身の公安部長が辞めるか辞めないかといった、どうでもよいことではなく、情報流出の原因が解明され再発防止策が徹底して講じられているかどうかを問題にして、そこが明確にならない限り、今後、重要な情報は一切与えないという対応をするでしょうね。
情報というものは人を生かしも殺しもするものですが、ここまで深刻な情報流出が明るみになったにもかかわらず、事実上放置していつまでたっても有効な手も打てない警視庁のような組織を、他の情報機関が相手にしていては、自らの組織の関係者や重要な協力者を危険にさらすことになりかねず生命すら失わせかねません。こんな間抜けにはとても付き合えない、というのが、諸外国の情報機関関係者の偽らざる気持ちでしょう。
公安部長程度を更迭することで諸外国の情報機関との関係修復を図れると、本当に考えているとすれば(そこまで愚かとは思いたくないですが)、救い難い愚かさと言うしかありません。

君がオヤジになる前に

君がオヤジになる前に

君がオヤジになる前に

先日、新宿ロフトワンで行われた堀江氏とのトークイベントの際、徳間書店の担当者の方からいただきました。ありがとうございました。
これも少し読んでいるところですが、25歳から35歳までの読者へのアドバイス、という形で様々な考え方が提示されていて、そのまま受け入れられないものであっても考えさせられるものもあったりして、なかなか参考になるという印象を受けます。かつては、周囲の人々が正しいと言っているやり方、価値観に従っておけば、まず問題はなくそれなりに順調な人生が送れたものでしたが、今は、大きな会社で勤務していても、ある日会社に行ったらつぶれていたといったことが、当たり前のように起きる時代であり、様々な考え方に接しながら、自分のやり方、ポリシーといったことを確立しておく必要が大きいでしょう。そういったことのためにも役立つ1冊という印象を、率直に受けました。