【神隠し公判】裁判員制度を意識し判例提示 死刑選択はあるか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090127-00000501-san-soci

裁判員制度をにらみ、検察側は「動機に酌量の余地があるでしょうか。いいえ、いかなる意味においても全くありません」と反語調で語りかけるように論告、「死刑。死刑に処すことを求めます」と「死刑」を繰り返して求刑した。

上記の事件の経緯を見ると、今後の刑事裁判、特に裁判員が関与する刑事裁判は、当事者が徹底して感情、情緒に訴え、法廷が「劇場」と化す、一種の「法廷劇場」のような場になる可能性が高いように思われます。元々、古い時代の刑事裁判にはそういった性格があって、大勢の群衆の罵詈雑言の中で一種の人民裁判が開かれたり公開で処刑が行われ数多くの弊害、悲劇を生んできたことは、歴史が示す通りです。近代の裁判は、そういった歴史に対する反省の上に立って、むき出しの感情、情緒により国家刑罰権の行使が不当な影響を受けないような、様々な制度を整備してきたはずでしたが、日本の刑事裁判は、国民の司法参加とか、わかりやすさの名の下に、時計の針を逆に戻す方向で大きく振れようとしているのではないかという印象を受けます。
誰かがどこかで、この流れを食い止めないと、取り返しがつかない事態になってしまうかもしれません。

強姦被害者望まなかったのに 宇都宮地検勇み足? 起訴”強行”

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20090125/102761

奥村弁護士のブログ経由で知りましたが、極めて珍しい経緯をたどっていますね。

発生直後、女性の処罰感情は強かったが、弁護士らに勧められ示談と告訴取り消しを決めた。被告の弁護人から示談の予定を聞いた検察官は同二十四日、管轄署の男性警部補に「起訴するのに示談はまずい。きょうは示談しないよう連絡してほしい」と依頼した。
その後、警部補の数度の要請に対し、女性は告訴取り消しの意思を伝え、応じなかった。しかし、やりとりの中で、電話を替わった交際相手の男性が「分かりました」と答え、警部補は女性側が要請に応じた、と考えた。これを受け、検察官は勾留期間が残っていたにもかかわらず同日、起訴した。

弁護側は起訴事実をほぼ認めたが、起訴そのものの違法性を主張、公訴棄却を求めた。弁護側の証人で被害女性が出廷、被告に有利な証言をする異様な裁判となった。
池本寿美子裁判長は「必要な捜査を遂げていても、示談の推移を見極めた上で起訴すべきだ」とし、説得は「被害者の自由な意思決定を妨げかねない行為」と指弾。一方「被害者が明確に拒否の意思表示をしなかった事情もありやむを得ない」と違法性は認めず、被告を懲役三年とした。

検察官は、あくまで被害者の真意を確認することに徹するべきで、「起訴するのに示談はまずい。きょうは示談しないよう連絡してほしい。」などといったことを口にする、ということが、そもそもおかしいですね。
記事では、示談状況や、それに伴い告訴取消の意思がどの程度明確に表明されていたかがよくわかりませんが、そういった話が進んでいるのであれば、勾留期間ぎりぎりまで事実関係を確認する必要があり、しかも、この点が重要ですが、検察官は、他人任せにせず「自ら」確認作業を行う必要があります。被害者の真意を確認するためには、検察官が被害者に直接会う、ということも行うべきで、そのあたりの見極めがつかなければ、とりあえず被疑者を処分保留のまま釈放するということも考慮すべきでしょう。
とてもプロの仕事とは思えない稚拙さで、情けない検察官、検察庁だな、と呆れる思いがします。

10−100ドルで豪邸譲渡 破綻のリーマン元CEOが妻に

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009012701000166.html

格安で譲渡した意図は明らかでないが、ファルド氏はリーマン破綻で損失を被った株主らから巨額の賠償を求める訴訟を起こされており、差し押さえを逃れて資産を保護する狙いがあるのではないかと米メディアは伝えている。

日本で同様のことが起きた場合、民事、刑事の両面でかなり問題になりますが、米国の法制下ではどうなんでしょうね。違法ではないとしても、いかにも強欲のなれの果て、という感じで、記事を読むだけでも気分が悪くなります。
現在のような未曾有の大不況から立ち直り、健全な経済を再建するにあたり、こういったペテン師をいかに排除して行くか、ということも重要な課題でしょう。

番組海外転送は適法 TV局側が逆転敗訴

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009012701000611.html

田中信義裁判長は「利用者の自由意思に基づく複製を容易にする環境や条件を提供したにすぎず、運営会社が複製しているとは認められない。放送を個人で視聴するのは適法な私的利用で、テレビ局側の利益を侵害しない」との判断を示した。

サービスは、海外に住む利用者が送受信機を有料でレンタルするなどして使用。手元に受信機を置き、インターネットを通じて見たい番組を予約すると、日本国内にある送信機が録画して転送する仕組みになっている。

一審判決の際に、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070331#1175269522

で、

形式的だけでなく実質的にも、個々の利用者による「私的複製」と認定できるかどうかがポイントになるように思います。

とコメントしましたが、高裁が、どこに着目して、異なる判断に至ったのか、大いに興味がありますね。
判決に接することができた時点で、改めてコメントできればしたいと考えています。