ネット脅迫の高校生を釈放 Winny事件絡み

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041013-00000038-san-soci

典型的な脅迫は、言葉や文書で相手方に対して害悪を告知することですから、相手が見るかどうかもわからないネットの掲示板で脅す、というのは、そもそも脅迫の態様としては弱いわけです(掲示板を見た人を介して相手方に害悪を告知して、という一種の間接的な脅迫になるでしょう)。
その上で、被疑者が高校生で、おそらく親とも同居していて逃亡の恐れがないか、低いと見られたと思いますし、警察が収集した証拠(掲示板のログとか被疑者が使用していたPC、被疑者の供述など)から、「犯人性」には揺るぎがなかったと推測されます。そして、そこまでの状況になっていれば、今さら罪証隠滅の恐れもないか、低いと見られたのでしょう。
少年については、少年法上、勾留は「やむをえない事由」がある場合にのみ認められることになっており、勾留の必要性や「やむをえない事由」といった点も含めて、京都地裁準抗告を認容して、勾留を却下したのだろうと思います。
事件の内容から見て(この被疑者は他人の投稿を単に貼り付けただけのようですし)、この被疑者の処分自体が、審判不開始程度で終わる可能性が高く、その程度の事件でわざわざ勾留までして身柄を拘束しなくても、という裁判所の判断が働いた可能性もあります。
世間の耳目を集めている事件に関連して、著名な匿名掲示板で府警幹部に対する個人攻撃が行われて、京都府警も神経質になったのだと思いますが、所詮、匿名掲示板上での「おしゃべり」ですし、逮捕だけでも十分効果は認められ、勾留まで求めてこだわったことで、京都地検京都府警が、世間に醜態をさらすことになったという印象です。
京都地検も、神経質になっている京都府警に踊らされず、法律家として冷静な判断を下す必要があると思います。
 なお、私は、既にこのブログでも指摘したように、捜査等への批判があれば、堂々と正当な言論をもって行うべきであり、匿名掲示板で公務員個人やその家族に対する害悪の告知めいたことを行うようなことは、厳に慎むべきだと考えています。

ドコモ:関連会社元社員を逮捕 通話記録を不正入手

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20041014k0000m040075000c.html

事件自体に、特に難解さは感じませんが、「東京地検特捜部」というところが、なぜ?という感じですね。

容疑者は02年4月にも、別の女性の通話記録を持ち出したとして同容疑などで同9月に警視庁に逮捕され、東京地裁で懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が確定している。

こういう人間が、再び、こういう事件を起こせるような立場に身を置いて(置けて)いたということに、恐怖心を感じる人は多いでしょう。

「思いやり深かった」 故田中元首相との半生語る

http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=NGK&PG=STORY&NGID=home&NWID=2004101301003370

ロッキード事件の公判立会していた堀田検事が激務で身体を壊した時、田中元首相が、人を介して、病院を紹介しようか、と言ったという話を聞いたことがあります(多分、堀田先生の著書)。
いろいろと問題のある人ではあったと思いますが、死後の今になって、こういった形で語られるというのは、やはり、大きな人間的魅力があったということなのでしょう。

法廷で、何の意味もない、前の事件の際の被告人供述調書を請求する若手検事

国選で担当した大麻取締法違反事件でのこと。ほんの微量の大麻を所持していたという、単純な事件で、被告人も認めており、1回で最初から結審まで行く、その程度の事件。
それにもかかわらず、公判立会検事(おどおどした態度だが、虚勢をはろうとする面が見え隠れする、性格の悪そうな若手)は、今回の事件と何の関係もない(その事件当時の被告人の生活状況や家族関係も含まれているという程度)の、前の事件の際の検察官調書まで、乙号証として請求。私は、前の事件の際の公判調書(併せて請求されていた)については、前の事件の中身のことがほとんど出ていないため同意し、窃盗の中身について長々とした記載がある検察官調書は不同意としたところ、上記の検事は、刑事訴訟法322条(任意性があれば証拠能力がある旨定める)に基づいて、「わざわざ」請求し、裁判所も、必要性がないという弁護人の意見に理解するような姿勢は示しつつも、結局、採用。
大勢に影響するものではありませんが、こういった検察官の立証は、明らかに不適当です。被告人が既に有罪判決を受けている事件の際の供述調書を請求してはいけない、とは言いませんし、必要性があれば請求すべきでしょう。ただ、上記のような大麻の事件で、なぜ、犯罪の性質もまったく異なる窃盗の調書が必要なのか?それも、情状面についてはきちんと盛り込まれている公判調書に、弁護人が同意しているのに?このような立証は、裁判官に対して不当な偏見を生じさせる恐れがありますし、常識的に考えても不適当でしょう。おどおどした若手検事からは、何ら説明はありませんでした(多分、わけもわからず、やっているのでしょう)。公判の際、この検事は、被告人質問で、的外れで下手な質問をしており、検事としての資質がかなり低いと私は判断しました。
なぜ、このような資質の低い若手検事が、こういった余計な、しなくてもよいことをわざわざ行っているのか?ひとつの推測としては、検察庁内部で、いわゆる情状立証充実ということが督励されて、過去の事件の際の公判調書や供述調書等を請求して効果をあげることが組織的に推奨されているのではないかと思います。
確かに、そういった方法が効果的な場合もあり、私も、現職のときには、「もう暴力団をやめます」と公判で言っている被告人について、過去の事件でも同様のことを言っていたことを過去の公判調書で立証し、暴力団離脱が真意ではないことを強調したりしていました。
こういった、意味のある立証なら問題ないですが、漫然と、過去の、それも全然別種の事件の供述調書を請求するなど、有害無益であり、また、そういった証拠について謄本等を作成する検察事務官の労力も無駄でしょう。
検察庁内部で、いろいろな指導を行うのは結構ですが、資質や思考力が低い「マニュアル」人間は、自分の頭で考えることなく、上記の若手検事のような、愚かな振る舞いを公開の法廷で行ったりしますから、検察庁としても、十分注意が必要でしょう。
こういう不適当な検察官立証が今後もまん延するようであれば、必然的に、弁護士会内部でも問題にせざるをえないでしょうし、3者協議の場で、なぜ、こういった有害無益なことが無反省に行われるのか、きちんとした説明を検察庁にしてもらうことになることを、刑事弁護委員会委員としても強く警告しておきます。

場当たり的な検察庁の処理

奥村弁護士のブログ

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20041014#p5

で、

共犯事件で、被害児童の財布からお金抜きとって(児童買春代金も取り戻した!)、さらに取り戻そうとした児童を殴打して、執行猶予ですか?
ほとんど強盗ですけど。

というコメントつきで紹介されていた事案。

その後,たばこを吸おうと財布の中を確認した女性が.財布の中にあった現金がなくなっていることに気づき.被告人両名との間で言い争いとなり,部屋にあった電話で警察へ通報しようとしていた女性に対し,被告人は,その女性の腹部を殴る暴行を加えてそれを止めさせようとし,公訴事実第3記載の犯行に及んだ。

これは、正に「事後強盗罪」なんですね。これで、事後強盗罪ではない、という説明をするほうが困難です。
以前、高裁の国選で、スーパー等で万引をして警備員や店員にに見つかり、殴ったり頭突きをするといった暴行を加え、全治数日程度の怪我を負わせたことで、「事後強盗致傷罪」(怪我は怪我なのでこういう罪名になります)になった被告人を担当したことが何回かありますが、法定刑が7年以上の懲役なので(今後の刑法改正で下げられるようですが)、酌量減軽しても懲役3年6月以上になり、前科がなくて示談していても執行猶予がつけられず(3年以下にしかつけられないので)、非常に酷なことになっていました。
言葉は良くないですが、なぜ、こんな児童ポルノ野郎に温情をかけ(?)、事後強盗罪になるものを、わざわざ窃盗と暴行に落として起訴しながら、偶発的な万引事犯を実刑にしかならない罪名で起訴するのか?
こういった場当たり的な検察庁の処理には、強い疑問を感じますし、こういった場当たり的な処理をしていると、国民の信頼を得ることは難しいでしょう。

アダルトサイトを問題視 プロ野球第2回ヒアリング

http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=sports&d=20041014&a=20041014-00000258-kyodo-spo

事情聴取した審査小委員会は、審査基準の中にある「公共財としてふさわしい企業、球団か」の観点から、両社が成人向けに展開しているアダルトサイトを取り上げ、ライブドアに対して厳しい質問が集中した。

私は、児童ポルノだけでなくポルノ全般について、肯定する思想は持っていませんが、「公共財としてふさわしいか」を問題にするのであれば、数千億円も金融支援(要するに借金の棒引き、踏み倒しですね)を受けながら不思議にも存続している企業、有価証券報告書の虚偽記載を長年続けたり総会屋に利益供与をしていた企業、客も入らないテーマパークで巨額の損失を出して球団経営をなげだしてしまうような企業は、「公共財としてふさわしい」のでしょうか?と思います。

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20041014i513.htm

「消費者法講義」(日弁連)

消費者法講義

この本の編集を担当して前書きも書いている平澤弁護士は、私とは大学の同級生で、同じ自主ゼミで勉強していたこともあります。この分野では第一人者になっているようで、うれしい限りです。
今日、この本を買って、一応、私の専門(?)分野である通信関係の箇所を読んでみました。全体が一通り、わかりやすく概説されており、この本全体が、そういった傾向で書かれているようです。
消費者問題は、特に弁護士の場合、接する機会が多い分野ですし、ロースクールで学んでいる人も少なくないようですから、基本的な最新の概説書として、手元においておくと便利な1冊、と言えると思います。

ネット心中について

新任判事補のブログ

http://plaza.rakuten.co.jp/droppy/diary/200410130000/

で、

他方で、集団自殺を犯罪として扱うのであれば、ネット上で、集団自殺情報を発見した段階で、「犯罪があると思料するとき」に辺り得ますから、これを基に、捜査できることになるのかもしれません。
従って、プロバイダー側に任意提出を求めるなり、捜索差押をかける、という方法もできなくはないことになります。
このような手段の適否、また、通信の秘密関係については、今ここで触れられるほど勉強が進んでいませんので、これくらいにしておきたいと思いますが、集団自殺を犯罪とすれば、このような捜査が理論的には可能になります。どの段階で実行の着手があったとするか、とか、将来犯罪のための捜査ができるか、という議論もあり得るでしょう。

とあったので、若干、コメントを。
確かに、「犯罪」として取り扱うことができて、令状が出るようであれば、警察としても、プロバイダ等から情報が取れるわけです。
この点について、テレコムサービス協会の、「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン

http://www.telesa.or.jp/010guideline/guide_2nd/guide2003.htm

では、

強制捜査への対応)
第17条   事業者は、捜査当局から差押、捜索又は検証に関する令状又は傍受令状の提示を受けた場合、令状の記載事項等を確認のうえ、必要に応じて立ち会い、押収物があるときは、押収目録の交付を受け、傍受の立会人となった場合においては、傍受の原記録である記録媒体の封印を行うものとする。
(任意捜査その他の照会への対応)
第18条   事業者は、警察官、検察官、検察事務官国税職員、麻薬取締官弁護士会、裁判所等の法律上照会権限を有する者から照会を受けた場合であっても、緊急避難または正当防衛の場合を除き、以下に掲げる通信の秘密に属する事項等を開示してはならない。
    (1) 通信の存在及び内容
    (2) 通信当事者の氏名、住所または居所
    (3) 通信当事者の電話番号、FAX番号、メール・アドレス等の通信ID
    (4) 通信日時
  2. 事業者は、前項各号のいずれにも該当しない情報を開示する場合において、照会者に対し書面の呈示を求めるものとし、記載事項等を確認のうえ、照会に対して必要と認められる範囲内で協力することができる。
  3. 前各項にかかわらず、プロバイダ責任制限法第4条に基づく発信者情報開示の請求を受けた場合においては、次条に定めるとおりとする。

とされていて、書いてあるとおり、令状によらない場合は、「緊急避難または正当防衛の場合を除き、以下に掲げる通信の秘密に属する事項等を開示してはならない。」とされています。
令状がないと、警察としては、非常に情報がとりにくくなってしまいます。警察(警察庁)としては、上記の「緊急避難」について、できるだけプロバイダ等が弾力的(柔軟?)に認定して、無令状での情報開示に応じてほしいというのが本音だと思いますが、テレサ協のガイドラインをみてもらえばわかるように、プロバイダ等は、電気通信事業法だけでなく、来春施行の個人情報保護法との関係もあって、情報開示には極めて慎重なので、なかなか警察の望む方向には進まない、というのが現状です。