「評伝 宮田輝」

 

私にとって、宮田輝は、記憶の中でNHKアナウンサーとしての姿がうっすら残り、その印象としてはその後に参議院議員へ転身した後のほうが強いという存在なのですが、興味を感じて本書を読んでみました。

戦前から戦中、戦後にかけての、日本の放送の草創期における活躍ぶり、アナウンサーとして、単なる話者としてだけではなく、番組企画や進行上の様々な工夫、そのための丹念な調査など、宮田輝の歩みや人物像が克明に紹介されていて、評伝として参考になる、成功したものだという印象を受けました。

氏を知る関係者は、参議院議員への転身を残念に思い、もっとアナウンサーとして活躍してほしかったと感じる人が多いようですが、確かに、あれだけの才能は、本来の持ち味を生かして、さらに花開くべきだったのかもしれません。政治家として、幸福とは言えなかった姿も本書では紹介されています。

日本の放送界に不朽の名声を残した人物として、長く語り伝えられることでしょう。