「兜町の風雲児」という表現に昭和的なものを感じますが、中江滋樹氏と言えば、昭和の終わりに一世を風靡した人物で、投資ジャーナル事件や、当時の有名アイドルとの浮名など、古い人ほど、ああ、あの人と思い出すでしょう。私もその1人です。
本書は、事故で亡くなる前の中江氏に取材を重ねていたジャーナリストの手になるもので、晩年の中江氏がどのようなことを言っていたのか、同氏の語る半生を含め、なかなか読み応えがあるものになっていました。
私自身は株には素人ですが、中江氏の語ること、感覚には独特なものがあり、一世を風靡したのもわかる気がしましたし、もっとうまく立ち回って、株の世界でもっと長く活躍できなかったのかと惜しい気もしました。
株に対する見方、考え方にも考えさせられるものがあって、私は1 度読んだ本はまず読まないほうなのですが、将来、再び読んでみたいと思わせる、そういう一冊でした。
腿筋を動かし一世を風靡した兜町の風雲児も、最後は困窮し、見舞う人もほとんどなくなり事故で不慮の死を遂げる、人生というのは難しいものだとしみじみ思いました。