点滴殺害 被告に無期懲役判決|au Webポータル国内ニュース
被告は起訴内容を認めており、争点は責任能力の程度だった。検察側は久保木被告の発達障害は軽度で動機形成の遠因に過ぎず、完全責任能力があったと指摘。弁護側は事件当時、久保木被告が統合失調症を発症し始め、責任能力が大きく損なわれた心神耗弱状態にあったと主張していた。
報道されている被告人の精神状態では、通常、完全責任能力が認められるところですが、全くの正常ではなかった点を、量刑上、減軽の方向で考慮するか、そこが焦点になりました。
いわゆる死刑に関する永山基準上も、被害者の数は重要な要素ですが、それだけで死刑が決まるわけではありません。過去のケースでも、無理心中を図って4名、5名と殺害したようなケースで死刑ではなく無期懲役刑が選択されたものもあります。要は、酌むべきもの、究極の刑罰である死刑の選択を躊躇させるような事情があったか、ということでしょう。
報道を見る限り、今回の判決では、被告人の当時の精神状態が、相当に被告人を追い詰め犯行へと赴かせた面があると見て、そこを酌むべきものと評価して死刑を回避したようです。
しかし、完全責任能力が認められ、犯行に及ばないという反対動機の形成が十分に可能であった以上、しかも、看護師として無抵抗の患者を保護すべき立場にあった以上、3名もの尊い人命を奪ったからには、精神面、動機面を考慮しても死刑を選択すべきという量刑判断は十分にあり得ます。
今後、検察が控訴する可能性が高いと思われますが、今後の上訴審で、そういった量刑判断が再度、問われることになるでしょう。