NHKスペシャル未解決事件「赤報隊事件」

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27日、28日と二夜連続で、私も観たのですが、なかなか見応えがある内容になっていました。第一夜のドラマの出来がとても良くて、幸せの中にあった故・小尻記者のご家族が不幸のどん底に陥る有様に心打たれました。真の愛国者であれば決してやってはいけないことをやり、真の愛国者が進むべき道とは真逆のダークサイドに落ちたのが赤報隊を名乗っていた真犯人でしょう。
第二夜では、ドキュメンタリーで警察の捜査状況が紹介されていましたが、おそらく情報源保護やプライバシー等への配慮から、今ひとつ中途半端さを感じるものになっていました。ただ、警察捜査がどういう方向で展開されていたのかはそれなりに理解できましたし、真犯人の身近にまで捜査の手が及んでいた可能性はあるような気がしました。赤報隊の動きがぱったりと止まったのも、その辺が影響しているのかもしれません。
昭和50年代から60年代は、まだベルリンの壁が崩壊する前で、ソ連をはじめとする共産圏諸国は厳然として存在し、極左勢力の爆弾テロも相次いで、右翼関係者の中にも、従来型の活動に飽き足らず、また、敗戦までの要人テロの手法に訴える時代でもなくなり(ただ赤報隊事件の動きの中にはその名残りもありましたが)、極左型の無差別テロにより戦後体制(新右翼的に言えばYP体制、ヤルタ・ポツダム体制)の打破、刷新へとつなげたいという動きが台頭する時代背景があったように思います。実際に、右翼関係者の中に、極左テロの手法に学ぶ動きが出てきた時代でした(極左のテロ教本を参考にしようとする動きもありました)。
そういう動きに親近性があったのは、上記の番組でも言及されていた新右翼でしたが、新右翼だけの動きというより、新右翼にも刺激されつつ、新たな右翼運動の潮流が起きてきた、そういう時代背景の中で起きたのが赤報隊事件であったと思います。その意味で、赤報隊事件は、日本の右翼運動の歴史の中で、突出した、特異な事件であったということもできるでしょう。
赤報隊事件の後に、暴力をもって同様の動きで続く者が出なかったからこそ、特異、突出と言えるわけですが、今なお「義挙」と支持する動きは一部にあって、この動きが再び台頭してくる可能性は十分にあります。警備・公安当局としても、古くて新しい、十分な警戒をすべき動きと言えると思います。
そういったこともいろいろと感じつつ、考えさせながら、じっくりと観ていました。
故・小尻記者、重傷を負い、ごく最近亡くなった犬飼元記者のご冥福を心よりお祈りします。