「号泣県議」野々村被告が記憶障害の可能性を主張 嫌疑「覚えておりません」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160126-00000071-sph-soci

昨年12月9日に「記憶障害の可能性がある」と病院に診断されたと話した。続けて3回「記憶を確認するので―」と同じフレーズを並べると、佐茂剛裁判長から「さっさと答えてくれませんか。記憶にあるかないか、そんなに難しいことではないでしょう」と、たしなめられた。

第1回公判で、既に被告人質問まで入っているということは、検察官の立証が速やかに滞りなく終わったということになると思います。
詐欺罪の立証としては、

・虚偽事実を告げ
・財物、財産上の利益を騙し取り
・一連の事実について故意がある

ということを証明することになりますが、政務活動費を騙し取るという態様について、客観的に虚偽事実を告げ騙し取っていながら故意がなかった、ということは考えにくいものがあって(その点に疑問があれば起訴対象からはずれているでしょう)、いろいろと弁解して無罪になるということは考えにくいものがあります。
報道では1800万円程度の被害額のようですが、全額弁償していることで、執行猶予がつく可能性が比較的高い事案とは言え、県議会議員というそれなりに高い地位にある公職者が多額の公金を常習的、継続的に詐取したという悪質な事案ですから、裁判所の心証を害すれば、実刑ということも十分あり得てくる、そういうケースだろうと思います。
その意味で、検察庁で詐欺事件を多数取り扱い、刑事事件の弁護人を比較的よくやっている私の目から見ると、法廷戦術としては、なかなか出廷せず勾引にまで至ったことを含め(そこでも裁判所の心証を大きく害しているのでしょう)、いかにもまずいのでは、という印象を受けます。
実際に、医師のお世話にならなければならないようなメンタル状態であれば、きちんと診断書を出すなり意見を求めるなりしてフォローしておかないと、裁判所に「反省のない不届者」という決定的、致命的な悪印象を与えてしまいかねないでしょう。実刑まっしぐら、という危険がある状態ではないかと思いますので、次回公判では十分にフォローすることをお勧めします。