「証人の声、傍聴人に聞かせる義務ない」 東京高裁判決

http://digital.asahi.com/articles/ASG7B5QFJG7BUTIL04Q.html

判決などによると、2012年にさいたま地裁であった殺人事件の公判で、地裁は法廷外の部屋にいる証人にモニターを通じて質問する「ビデオリンク方式」を実施。この裁判の被告の共犯として起訴された男の弁護人を務めた塚田弁護士が傍聴席にいたが、証言の大半が聞こえなかった。
この日の判決は「裁判の公開の原則」について「保障されるのは公正さ」と指摘し、「傍聴人が証言をつぶさに知る権利を与えたものではない」とした。

いろいろと問題を含む判決ではないかと思うのですが、法廷内で行われていることが、逐一、傍聴人に理解されなければ公開されたとは言えない、というのはあまりに窮屈すぎるとしても、「公開」に値する程度に傍聴人にわかるような運用がなされていなければ、実質的に公開されていると評価できず、公正さが担保されないということになるのではないかと思います。
ただ、そういった、問題のある運用が行われた場合に、では、傍聴人の具合的権利性の問題として捉えることが果たしてできるのか、事は裁判制度としての在り方の問題であり、たまたま傍聴していた個々の傍聴人の権利が侵害されたと捉えるべき問題なのかという疑問も感じます。
裁判公開という憲法上の要請を、いかに実質的に実現するか、今後に大きな課題を残した判決という印象を受けます。