http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140204/waf14020407000001-n1.htm
判決理由で的場裁判長はまず、兼國会の組長である井上被告の支配力が「暴力団特有の厳格な上下関係や暴力的価値観を背景とする絶対的なものであることは経験則上明らか」と判断。今回の事件について「兼國会の最高幹部らや下部組織の組員が相当数関与し、実行者の人選や運搬、実行、逃亡支援などの役割分担がされており、兼國会の指揮命令系統に従って組織的に準備、遂行された」と認定した。
さらに、犯行の動機が幹部らの個人的な利益とは到底考えられないことから、「上部組織との関係を含む兼國会としての重大な利害のために行われたことは自明というほかない」と指摘。兼國会のために組織として行われた犯行である以上、「井上被告の指揮命令に基づかずに行われたというのは、極めて不自然で通常はあり得ないというべきだ」と結論づけた。
加えて、判決では暴力団犯罪全般についても言及された。
暴力団の組織的な犯行は「経験則上、特段の事情がない限りは、当該暴力団の組長が共謀に加わり、その指揮命令に基づいて行われたものとすべきだ」と判示。今回の事件については「暴力団の組織や行動に関する経験則のとらえ方が重要な意味を有する事案」と評した。
「共謀」というものをどのように捉えるか、という、根本的な問題があるでしょう。従来の刑事実務では、「特定の犯罪を遂行する合意」と捉えられてきて、相応の内容、重みをもって考えられてきたと思います。組の下の者が誰かをはじいてしまおうと画策している、それを知った組長(「知った」経緯も問題になりますが、合意を形成するような状況ではなくたまたま知って)が止めなかった、といった場合に(より上位の組から直接、配下に指示が出され下部団体の組長は蚊帳の外ということもあり得ます)、どこで共謀が形成されたか、かなりの微妙さがありますが、上記の判決の論理では、そういうものもざっくりと共謀に含めてしまうことになるでしょう。そのような共謀は、かなり希薄化されたものになり、むしろ、組織犯罪集団を形成している以上はその集団が犯した犯罪には知っていようがいまいが責任を負うという、国際組織犯罪防止条約の結社罪に通じる、共謀とは異質な刑事責任の世界になりそうな気がします。
組織犯罪の処罰の在り方や今後の立法論も併せて考えないと、共謀というものがますます希薄化し、そこに、「共謀罪」が導入されることで、組織犯罪以外にも希薄化された共謀概念が広く及ぼされてしまうという、かなり危険な状態にもなりかねないでしょう。