北区中学工事汚職、贈・収賄側とも異例の不起訴

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130624-OYT1T01670.htm?from=ylist

捜査機関が逮捕に踏み切った汚職事件で、贈賄側、収賄側共に不起訴となるのは極めて異例。特捜部は「逮捕するだけの疑いはあったが、起訴に足りる証拠はなかった」として詳細な理由は明かさなかった。捜査を担当した警視庁幹部は「不起訴については地検が判断したことなので、コメントする立場にない」と話している。

関係者によると、2人は任意の捜査段階で容疑を認め、特に専務が「工事現場の事務所で現金を渡した」と具体的に供述したことから、警視庁は逮捕に踏み切った。しかし、逮捕後の取り調べに主事は否認。捜索などによって現金の流れを調べたが、現金が主事に渡ったことを示す客観的な証拠を得ることができなかったとみられる。

収賄事件では、特に収賄側は公務員で、逮捕しましたが起訴できませんでした、では到底許されない、という確固とした考えの下で捜査機関は動くものです(もちろん、贈賄側を軽く見ているというわけではありません)。贈収賄罪は、必要的共犯(対向犯)として、双方の犯罪事実が合理的な疑いを入れない程度に認定される必要があり、通常は、贈賄側の自白が主要な証拠となって強制捜査に入ることが多く、かつ、警察が警察だけの判断で身柄を取る、ということはなく、検察庁との緊密な協議の上で、逮捕の時点で、それまでの内偵による捜査結果も踏まえ、「起訴できる」という見通しの下で逮捕まで踏み切るものです。それだけに、上記のような不起訴は、異例中の異例で、逮捕時の判断は一体どうなっていたのかと、捜査機関内部では相当問題になっている(あるいは今後大きく問題になる)ことは確実でしょう。
報道を見る限り、贈賄側の供述が十分検証されないまま、中途半端な状態で身柄まで取ってしまった、と言われても仕方がない(おそらくその辺が真相)のではないかと思います。それだけ、任意性、信用性のある自白を獲得する捜査力、取調べ能力が落ちている、ということでもあると思います。
従来の、力任せでの自白獲得に頼るような捜査手法では、知能犯で、今後もこのような事態が続出し、贈収賄事件のような難易度の高い事件がなかなか立たなくなってくる可能性が高く、捜査手法の大幅な見直しが迫られているという認識を、捜査機関自体が持つべきでしょう(と言っても無理だとは思いますが)。