http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130729-OYT1T01138.htm
大阪府警北堺署の誤認逮捕問題で、大阪地検は29日、窃盗罪に問われた男性会社員(42)について「捜査が不十分だった」として起訴を取り消したと発表した。
上野友慈次席検事は、「注意していれば、無実に気づけた。85日間にわたり身柄を拘束し、大変申し訳ない。心よりおわび申し上げます」と謝罪した。
起訴して公判に係属している刑事事件について、誤起訴であることが判明した場合の検察庁の対応としては、
1 無罪判決を求める
2 公訴を取り消す
という、2通りの対応があり、公判がある程度進行している場合は1、まだ審理に入っていない場合は2の措置が取られやすい傾向があると思います。遠隔操作事件で大阪地検に誤起訴された人の場合は、起訴後、間もなく誤起訴であることが判明し、公訴取消の措置がとられました。公訴取消の場合、再起訴の可能性が理論的にはあって、無罪のほうが、再起訴ができない(既判力により再訴遮断効がある)分、被告人には有利とはいえますが、実態としては、誤起訴が判明している以上、再起訴は不可能で、被告人にとっての有利不利は特にないと思います。
ただ、公権力が誤った起訴をして、誤っていたから公訴を取り消しました、ごめんなさい、で終わって良いのでしょうか。遠隔操作事件の場合は、誤った経緯がそれなりに検証され公表されましたが、普通は、公訴を取り消して謝って終わり(刑事補償等は講じられるものの)ということになりやすいと思います。そうではなく、公判の場で、検察官が、なぜ誤った起訴がなされたかをきちんと説明し、公権力として必要な説明責任を果たした上で無罪判決を求めることが、民主国家である我が国の検察としてのあるべき姿ではないでしょうか。その意味で、被告人や弁護人も無罪判決を求めていると報じられる中、公訴を取り消した検察庁の措置には、釈然としない、強い違和感のようなものを感じざるを得ません。刑事手続は誰のためにあるのか、ということが検察庁に対して改めて厳しく問われているのではないかと思います。