http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130704-00000520-san-soci
最高裁によると、裁判員裁判で今年3月末までに27人に無罪判決が言い渡されたが、そのうち4割を超える12人が覚醒剤密輸事件だ。5月にも大阪、東京両地裁で1人ずつ無罪判決が出た。ほとんどが、海外で知人から渡された手荷物について「中身は知らなかった」という主張が認められるケースだ。
事態を重くみた最高検は、昨年4月に最高検検事らで構成される内部委員会「覚醒剤密輸入事件の捜査公判立証の在り方検討会」を立ち上げ、判例などを検証して立証の注意点をまとめ、今年4月までに各地検に周知した。
関係者によると、航空運賃や宿泊代を知人側に負担してもらっている▽渡航目的があいまい▽日程が極端に短い−などの不審点を積み重ね、丁寧に説明することなどを求めている。
一方、荷物の中から覚醒剤が見つかっても、持ち主が覚醒剤を持っていると認識していたかどうかを明確に証明できなければ、起訴を見送る判断も必要だとしているという。
私は、検察庁を辞める前の5か月、千葉地検の麻薬係検事で、成田空港でのこの種の密輸事件をかなり取り扱った経験があるのですが、「運び屋」は、その多くが犯行を否認し、上記のような、最高検が言っているような間接事実、状況証拠を積み重ねた立証をしようとするものの、「決め手」には欠ける場合がほとんどですから、結局、「怪しい」というレベルにとどまりがちですね。
職業裁判官は、従来は、運び屋というものはこんなものだ、という、職業的な刷り込み、決めつけで「怪しさ」を「有罪」へとステップアップしていた傾向がかなりありますが、裁判員にそれを期待してもどだい無理な話なので、このように続々と無罪が出ているのではないかと思われます。
ここは、思い切って、例えば、こうした運び屋には、自白による刑の減免規定をもうけ、自白した場合は3年以下程度の懲役刑にとどめ、特に前科がないような場合は原則として執行猶予を付す、といったことにして(否認を続け起訴が無理であれば思い切って不起訴にする)、運び屋に運ばせている薬物密売組織の解明に、捜査の重点を移す、といったことを真剣に考えないと、運び屋というものは使い捨ての駒みたいなものですから、それを処罰するために多大な捜査のリソースを費やす(しかも無罪が続出する)という、馬鹿らしいことをこれからも続けることになってしまうでしょう。