PC遠隔操作事件が捜査終了 「ウイルス作成罪」立件断念は警察の「敗北」か?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130624-00000502-bengocom-soci

”真犯人からの犯行メール”を受け取るなど、この事件と強い因縁を持つ落合洋司弁護士に、これまでの捜査への印象を聞いた。

検察、警察当局としては、すでに他の罪で起訴、追起訴を重ねていますから、あえて無理に立件すべきだとは考えなかったのではないかと推測されます。
業務妨害など他の犯罪と比べて、ウイルス作成罪は立証構造が違う。つまり、有罪とするために証明しなければいけない点が全く異なるという点を、考慮する必要があるでしょう

ちょっと捕捉しますと、既に起訴されている事件(その真犯人が被告人かどうかはわかりませんが)での捜査機関の依拠する証拠は(これもまだ明確ではないのですが)、被害が生じた、ということを前提にしますから(これで犯行の日時は特定できます)、犯行場所、犯行の手段(使用PC等)は特定できなくても、実務上、訴因の特定で要求される「他の犯罪と識別できる程度の特定」は何とか満たすことができます。しかし、ウイルス作成罪については、上記の記事で指摘しているような事情(自白が得られていない)もあり、発見、分析されているウイルス自体から作成日時が特定できるということでもないようですから、犯行日時という、他の犯罪と識別する上での重要な要素が特定できない、ということになってしまいます。あくまで、プログラム、データの作成ですから、リアルにウイルスが「これ、この1つ」と対象が一義的に明確になる、というものでも、おそらく、なくて、犯行日時が特定できないままでは、立証が相当困難で暗礁に乗り上げるような状態になりかねないでしょう(立証以前に、そもそも訴因として不特定ではないか、が問題になる可能性もあります)。立証構造が違う、というのは、そういうことを指して述べているものです。