通行人襲った男性、「熱中症で錯乱」と無罪判決

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130529-00000475-yom-soci

片田真志裁判官は「会社員は犯行時、熱中症による急性錯乱状態で、心神喪失だった可能性がある」として無罪を言い渡した。弁護側によると、熱中症を理由に刑事責任能力を否定した判決は異例という。
判決によると、会社員は同月9日夜、神戸発香川行きのフェリーに乗り遅れ、野宿していたところ、かばんを盗まれたため、神戸市内を2日間にわたって徘徊(はいかい)。同月11日午後6時頃、散歩中の無職男性(80)を殴り倒した後、顔を踏みつけるなどし、高次脳機能障害の後遺症が残る重傷を負わせ、通行中の40歳代の男性の顔も殴り、軽いけがをさせたとして起訴された。
会社員は2人と面識がなく、目撃者には「殴りかかられたので倒した」と説明し、兵庫県警の調べには「なぜ襲ったのかわからない」などと供述していた。
地裁が職権で実施した精神鑑定では、会社員は2日間、睡眠や食事をとらず、犯行当日の気温が28度、湿度が60〜80%だったことから、「熱中症により、意識混濁や被害妄想などの意識障害が生じていた」との見解を示していた。

私も、刑事司法に関わるようになって今年で25年目ですが、熱中症責任能力を否定した事例というのは聞いたことがないですね。確かに異例の判決だと思います。
ただ、記事によると、面識のない人に一方的に暴行を加え動機にも何ら合理性がなく、その当時に心身の状態が相当悪かったことは捜査機関も把握できていたはずですから、医師の意見を聞く、鑑定を行う、といったことを捜査中に慎重におこなっておくべきではなかったかと思います。記事では、捜査中にそういった点を意識した捜査が行われていたか不明ですが、公判で、裁判所の職権により鑑定が行われたとのことであり、十分な捜査が行われていたとは考えにくいものがあります。
責任能力は、精神病の病歴がある時だけに問題になるものではない、ということを念頭に置き慎重に見る必要があるということを考えさせられるケースです。