「美濃加茂市を焼け野原にするぞ」と警察に言われた――保釈された藤井浩人市長が会見

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140825-00001958-bengocom-soci

警察の取調べでは、「はな垂れ小僧に投票した市民は何を考えていたんだ」「早くしゃべらないと美濃加茂市を焼け野原にするぞ」と言われたという。

私も、今はしがない弁護士ですが、かつては取調官として取調べに励んでいたことがあり、その当時、否認している被疑者がいると、なんて憎たらしい奴なんだと、罵倒したり愚弄したりしたい衝動に駆られたこともありました。
そういった際に、よく思い出していたのが、確か

特捜検事ノート (中公文庫 か 33-2)

特捜検事ノート (中公文庫 か 33-2)

で紹介されていたエピソードで、「信逸」という名前の被疑者に、ある検事が、信を逸するなんて親もよくこんな名前をつけたものだと愚弄するようなことを言ったところ、被疑者の感情を著しく害し自白を得るどころではなくなってしまった、そういうことを言っては絶対にいけない、という、割り屋として知られた河井氏の戒め、教訓でした。同書では、河井氏が造船疑獄事件の、否認する重要被疑者を取り調べた際のエピソードも紹介されていて、これだけ世の疑惑を招き、このままではあなたは社会で渡って行くことは難しいのではないか、きちんと話すべきことは話すべきではないかと懇々と説いて自白を得た、ということも、印象に残るものがあり、難しい取調べの際にはよく思い出したものでした(記憶で書いているので、実際に書かれていたエピソードと多少違っているかもしれません)。
取調べにおける信頼関係というものが、最近は、可視化に反対する論拠として捜査関係者らから安易に語られがちですが、現行の取調べが、信頼関係を破壊するような、野蛮なものに堕しがちであることには憂慮すべきものがありますし、被疑者自身にしかわからない、黙っていればわからないような、深く秘められた真実を引き出す上での、真の意味での「真実が語られる」取調べというものを、取調官は、常に自らを真摯に見つめつつ徹底的に追求しなければならないのだろう、そこに終わりはない、と思います。
上記の記事にあるような言動を取調官が実際にしたのかどうかは、よくわかりませんが、少なくともそのような印象を持たれる取調べではあった、取調べとしては失敗の部類に入るものであった、ということは言えるでしょう。こういう取調べであってはならないという、悪い方の見本、教訓となる取調べとして、今後、語られることになりそうです。