東電OL事件、再審の可能性…別人DNA検出

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/touden.htm

東京都渋谷区で1997年に起きた東京電力女性社員殺害事件で、強盗殺人罪により無期懲役が確定したネパール国籍の元飲食店員ゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)が裁判のやり直しを求めた再審請求審で、東京高検が、被害者の体から採取された精液などのDNA鑑定を行った結果、精液は同受刑者以外の男性のもので、そのDNA型が殺害現場に残された体毛と一致したことがわかった。
「(マイナリ受刑者以外の)第三者が被害者と現場の部屋に入ったとは考えがたい」とした確定判決に誤りがあった可能性を示す新たな事実で、再審開始の公算が出てきた。

1審無罪、2審逆転有罪という経緯をたどった事件でしたが、とりあえず、ググってすぐに見られるネット上のサイト等で見たところ、高裁判決の根拠は、

1 現場に残された体液が犯行時の被告人のものと認定した上で、事件前に犯行現場のかぎを管理人に返却したという被告人の主張は信用できず、被告人が鍵を使用して被害者と空き室に入り犯行に及んだと推認するのが自然かつ相当
2 被害者と最後に会ったのは事件当日より前とする被告人の弁解は、被害者の手帳記載の正確性から信用できず、被害者から奪った4万円を家賃にあてたと認められる
3 犯行日前に7万円弱の所持金しかなかった被告人が、犯行日後に家賃10万円を知人に渡したのは被害者から奪ったものと認められる
4 一審の無罪判決の決め手となった、被害者の定期券が被告人の土地勘のない豊島区の民家で発見されたなどの疑問点は有罪認定を左右しない

といったことであったようです。被告人が犯行現場となった部屋の鍵を持っていて、それを返却したことも、有罪認定の有力な根拠になっています。
また、確定判決当時から、殺害現場にあった陰毛の中には誰のものか不明なものがあったとされ、被害者が売春行為を繰り返していたことも判明しています。
そうすると、上記の記事にある事実が、確定判決における証拠構造(状況証拠の積み重ねにより犯人性を認定)をどこまで崩すか、については、にわかには即断できないものがあるように思われます。確定判決の証拠構造自体が、元々ぜい弱なものであり、特に、被害者の行動から、仮に被告人が犯人であったとして、その直近に、別の者と性行為を行い、その際の痕跡が、記事あるようなものであるとしても矛盾はない、と認定される可能性も、ないとは言えないでしょう。
新証拠が、確定判決の証拠構造をどこまで突き崩すものになるのか、今後、大きく注目されると思います。

追記:

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011072102000190.html

こちらの記事は証拠構造に踏み込んでいて、参考になりますね。

被害者の遺体の下から見つかった四本の体毛は、一本は被害者、もう一本はマイナリ受刑者のもので、残り二本は二人以外のものだった。一審は誰のものか分からない体毛があることから、真犯人がほかにいる可能性を示していると認定。二審判決では「以前にネパール人が居住し掃除が不十分であったと考えられ、第三者が犯行に及んだ可能性があることにはならない」と逆の判断をした。
体毛の一本と被害者の体内に残っていた精液のDNA型が一致するという鑑定結果は第三者が犯行現場にいた可能性を示すが、いつ被害者と性交をしたのかという、犯行日時の特定につながる決め手になるのかは不明だ。
また被害者のショルダーバッグの取っ手からは、受刑者と同じB型の血液反応も出ており、今回の鑑定で明らかになったO型の第三者のものとは異なり、裁判所がこれらの要素をどう判断するのかが注目される。

現場に残された受刑者の体液の存在、部屋の鍵を受刑者が返却していること、さらには、上記のような現金の存在、といったことにより犯人性を認定した確定判決が、死亡に近接した時期に第三者が存在していた可能性が高い、ということで、どこまで覆ってくるかでしょうね。特に、鍵の問題が、直近で第三者との接触があったとしても最後に被害者と接触したのが受刑者であるという推認は覆らない、という判断につながる可能性があるのではないかという印象を受けます。
元々がかなりの難事件ですが、新たな事実が判明したことで、事実認定の困難さがさらに増し、再審申立審の今後の行方が大きく注目されます。