http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120324k0000m040136000c.html
監視委によると、AIJは集めた1458億円の受託資産を、デリバティブ取引の一種で日経平均株価を基にした日経225オプション取引と、日本国債のオプション取引で主に運用。どちらも本来は運用に失敗しても「損切り」できることがメリットだが、浅川社長はリスク回避の措置を講じずに高い収益だけを狙う「裸売り」という投機性の高い手法で運用していた。
これにより03年3月期に1億円未満だった損失額は、04年3月期16億円▽05年同34億円▽06年同270億円▽07年同40億円▽08年同186億円▽09年同37億円▽10年同501億円▽11年同7億円−−と毎年億単位で計上。裸売りの手法を多用した上で、市場や金利の動きに逆行した予測に基づき、勝率の低い「逆張り」を繰り返し、手じまいも遅れたため、損害が膨大になったとみられる。
刑法の背任罪について、いわゆる「冒険的取引」という類型の行為が問題になることがあり、当該事務処理が通常性を逸脱していない限り背任罪は成立しない、と一般的に考えられていますが、AIJの上記のような運用は、年金資産の運用として通常性を大きく逸脱していると解する余地があり、かつ、委託者をだましていたこともあって、背任罪における「任務違背行為」に該当する可能性が出てきているのではないかと思います。金融商品取引法違反を入口事件として強制調査が行われたものですが、今後、出口としての立件が検討されるにあたり、詐欺罪のほか、背任罪(あるいは特別背任罪)も、検討対象になってくる可能性がありそうです。
多数の人々の老後を支える貴重な資金が、投機性の極めて高い、ハイリスクな運用で、みるみるうちに失われていたことが明らかになりつつあり、汗水たらして働いて得たなけなしのお金を失った人々としては、やりきれない思い、持って行き場のない怒りが募るばかりでしょう。