勾留百二十日  特捜部長はなぜ逮捕されたか

勾留百二十日  特捜部長はなぜ逮捕されたか

勾留百二十日  特捜部長はなぜ逮捕されたか

一昨日、書店へ行くとこの本があり、興味を感じ、読まないかもしれないと思いつつ、つい買ってしまったのですが、読み始めると、意外とおもしろく、せっせと読んでいるところです。
特に興味を感じているのは、取調べを受けながら、いつ逮捕されるかと動揺したり、弁護人による接見を心待ちにするなどの、身柄拘束中の被疑者心理で、体験した者でなければ語れないリアルさがあり、また、私自身の経験から想像していたところと合致していたり意外な思いをするところもあって、参考になります。
著者には著者なりの主張があり、本書でも、そういった主張で一貫していますが、最高検が著者と元副部長を逮捕することでマスコミ・世論の検察批判を弱めることができたとか、一連の事件の責任を著者と元副部長に押しつけ2人を悪の権化に仕立て上げ放逐することで検察組織や検察上層部への批判を防ぎ沈静化させた、といった主張には、正直、首を傾げさせるものがありました。犯人隠避が立件され元特捜部長、元副部長が起訴されることによる検察への深刻なダメージを考えた場合(それはその後の状況を見ても明らかでしょう)、実態がないものをでっち上げてまでそこまでするかどうか、そんなことをして検察批判が弱まったり沈静化するようなものか、ということは、素朴に疑問を感じました。
長年、検事として活躍していた人物が、突然、被疑者という立場に立たされ、自分の事件を見るとこう見える、こう見たがる、という意味で、類書が乏しく、一読の価値はある一冊と言えるでしょう。