1 「本当に申し訳ないと思っています」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031715110007-n1.htm
2 「私も部長に怒られました」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031715120008-n1.htm
3 データ改竄「渦のように心に残っていた」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031715130009-n1.htm
4 隠蔽「上司の指示で仕方なく…」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031715140010-n1.htm
5 逮捕後「年賀状は十数枚しか…」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031715140011-n1.htm
6 元特捜検事の意地と誇り
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031717020012-n1.htm
7 「上司は間違いなく逮捕…」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031718300013-n1.htm
8 「いつか辞めたいと思っていた」
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110317/osk11031718550014-n1.htm
一通り読んでみましたが、
前田被告「最初に入った大阪特捜は和気あいあいといった感じでしたが、東京地検特捜部はそんな雰囲気はありません」
前田被告「平たく言うと、指示が上から直下型で下りてくる、そういう組織です。東京には地検、高検、最高検がある。最高検から指示が直接下りてくることもありました。和気あいあいとしていることはありません」
前田被告「心も体もぼろぼろで…。体は特に、定期健診で常に『要再検査』でした。しかし忙しくて病院には行けないです。毎年体調が悪化していく状況です」
といったあたりは、特捜部の実態について内部の者が赤裸々に語ることは稀であるだけに、リアルであり、また、特捜部というものを理想的なものとしか見ていない、おめでたい人にとっては衝撃的でしょう。その中にいる人間を大切にしない、先のない組織、ということを強く感じさせるものがあります。
全体としては、
前田被告「すべて覚悟しています。真摯に受け止め、償うつもりです」
といった供述に見られるように、率直に語っているという印象は受けますが、
前田被告「何も証拠がないところに、主任が勝手にストーリーを考えるなり描くなりして証拠を集めてくる、そういうのは、ありません。証拠を集めていろんなケースを想定して、捜査をすすめるんです」
などと述べ、村木さん事件について、有罪判決獲得の見込みがあると強弁するところは、フロッピーディスクの改ざんなどという「禁じ手」まで使ったことと大きく矛盾し、率直に語っていないという印象を強く受けます。
その他の点で、特に感じたのは、元部長、、元副部長による犯人隠避について、全面的かつ具体的に認めた上で、
前田被告「正直に申し上げると、今でも…。2人とも人間的に非常にすばらしく、尊敬しております。かばえるものなら、かばいたい。報道で知りましたが、2人は『前田から虚偽の報告を受けた。意図的とは聞いていない』と主張されている。できればその主張に合わせるよう、かばいたいという気持ちはあります。他方で、妻は手紙や面会で『正直に話してほしい』と…」
《ここまでよどみなく話していたのが、声が詰まった。涙をこらえている。心持ち耳が赤くなっている》
などと述べていることで、元部長、元副部長について虚偽供述をすることによる自らのメリットが何らない状況の下、上記のような心境での供述は、裁判所により信用性が高く評価される可能性が高い(もちろん他の証拠との整合性なども慎重に見る必要はありますが)という印象は強く受けました。
私は、担当する事件の被告人の代理人として前田元検事を別件の偽証罪で告発し、不起訴になったため、その後、検察審査会に対する審査申立を行っています。担当する事件では、前田元検事に対する反対尋問をかなり厳しく行ったつもりで、証拠改ざんという、あってはならないことまでやった人間を簡単には許せません。ただ、そういう私にも、彼が語る、
前田被告「若手が弱気な意見を言うことに対して、上司が快く思わず「あいつは弱い」という人もいます。上司や幹部がどんな小さなマイナスの意見でも言いやすい雰囲気を熟成していただきたい。部下も1人で抱え込まず、同僚や先輩、部の枠を超えて相談できる組織づくりをお願いしたい。ただ、組織やシステムをいくらいじっても、最後は人。研修することで私のような人間が2度と出ないようにしてもらいたい、と思います」
ということは、自分自身がかつてそういう場に身を置いたことがあるだけに、痛いほどよくわかり、こういった指摘は、今後の改革に生かしてほしいという気がしています。
求刑は、法定刑の最高である懲役2年ということですが、検事が、それも主任検事という枢要な立場にある者が、事件に関する重要な証拠を改ざんするという極めて悪質な犯行であり、執行猶予が付かず実刑になる可能性もかなりあるでしょう。実刑の場合、懲役1年から1年2月程度、というところでしょうか。私は、実刑になる、と見ますが、判決が待たれます。