殺害前「空白の1時間」 東電社員接触、4人目存在か

http://www.asahi.com/national/update/0722/TKY201107220714.html

被害女性は1997年3月8日の事件当夜、少なくとも3人の男性と一緒にいたとされる。
確定した二審・東京高裁の判決によると、女性は同日午後7時ごろ、JR渋谷駅で旧知の日本人男性と待ち合わせて時間をともにした後、午後10時16分ごろに別れた。

7月23日の朝日朝刊では、上記のネット記事の後の部分で、突っ込んだ分析をしていて、東電OL殺人事件で私が読んだ記事の中では、最も参考になる記事でした。添付の一覧表

http://twitpic.com/5w4hkc

がうまくまとめています。
逆転有罪を宣告した高裁判決で認定されていますが、上記の一覧表の通り、午後10時16分頃に男性と別れた後、午後10時半過ぎに、正体不明の男性と被害者が連れ立って歩いているのが目撃されていて、午後11時半ころに、高裁判決では元被告人(受刑者)と認定されている人物と犯行現場付近で目撃されているまでの、被害者の行動が不明です。
紙面の記事では、上記の正体不明の男性(2人目)が、被害者の体内から採取された体液、現場に落ちていた陰毛の男性(4人目)と同一人物ではないかという、捜査関係者の見方も紹介され、上記のような空白の1時間に、被害者と男性がどこかで性行為に及びその際に被害者に付着した陰毛が犯行現場に落ちていたという可能性も指摘されています。
高裁判決では、被害者が受刑者以外の人物と部屋に入ったとは考え難い、と認定され、多くの記事では、そこが決定的に揺らいだ、再審へ、と報じられているわけですが、確かに、高裁判決でもその部屋が常に施錠されていたとまでは認定されていないことや(その点で、新たに存在が判明した、受刑者以外の第三者による犯行を考える余地が出てくる)、上記の一覧表で3番目に位置する男性(犯人と思しき)が、目撃者によっても受刑者と似ているという程度でしかなく受刑者と断定されているわけではないなど、受刑者が当時そこにいたという認定に確固としているとは言い難いものがある一方、高裁判決では、部屋の鍵を受刑者が持っていて被害者殺害後に返還していることが重視されていて、各種の状況証拠の評価如何によっては、有罪にも無罪にも転ぶ事件、と言えるように思います。被害女児の着衣に付着していた体液のDNA鑑定結果から、確定判決の誤りが直ちに認定できた足利事件とは、証拠構造がかなり異なっていることには注意を要するでしょう。
再審申立審で、こういった証拠構造に、裁判所がどこまで踏み込み、新証拠により確定判決に合理的な疑いが生じた、と認定するかには、予断を許さないものがあるのではないかと思います。