東電女性殺害:検察側「再審の可能性も」 請求審終了

http://mainichi.jp/select/news/20120524k0000m040094000c.html

高検が新たに実施し昨年7月に結果を開示したDNA型鑑定で、被害女性の体内に残った体液の型と、殺害現場のアパートの部屋にあった別の男性(弁護側主張の「第三者」)の体毛の型が一致。同9月以降に追加的に行われた鑑定でも、被害女性の胸部や下半身の付着物などから第三者の型が検出された。
一連の鑑定で受刑者と特定できる型は検出されず、弁護側は「女性と最後に性的関係を持ったのは第三者。確定判決(00年、東京高裁)に合理的な疑いがあるのは明確」と再審開始を請求。

昨年、本ブログの中の、

殺害前「空白の1時間」 東電社員接触、4人目存在か
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20110726#1311685914

で、

高裁判決では、被害者が受刑者以外の人物と部屋に入ったとは考え難い、と認定され、多くの記事では、そこが決定的に揺らいだ、再審へ、と報じられているわけですが、確かに、高裁判決でもその部屋が常に施錠されていたとまでは認定されていないことや(その点で、新たに存在が判明した、受刑者以外の第三者による犯行を考える余地が出てくる)、上記の一覧表で3番目に位置する男性(犯人と思しき)が、目撃者によっても受刑者と似ているという程度でしかなく受刑者と断定されているわけではないなど、受刑者が当時そこにいたという認定に確固としているとは言い難いものがある一方、高裁判決では、部屋の鍵を受刑者が持っていて被害者殺害後に返還していることが重視されていて、各種の状況証拠の評価如何によっては、有罪にも無罪にも転ぶ事件、と言えるように思います。

とコメントしたのですが、確定判決の、確固としたものとはいえない証拠構造に基づく事実認定に、再審段階で出てきた、

1 被害女性の体内に残った体液の型と、殺害現場のアパートの部屋にあった別の男性(弁護側主張の「第三者」)の体毛の型が一致(←犯行に及んだ者が受刑者ではない可能性)
2 一連の鑑定で受刑者と特定できる型は検出されていない(←犯行に及んだのであれば、ここまで徹底した鑑定で何らの痕跡もないのは不自然)

といった点を加えて総合評価した場合に、合理的な疑いが生じるかどうかが焦点ではないか、という印象(証拠そのものを精査できていないので印象にとどまりますが)を受けますね。
東京高裁が、どういった心証を持っているのかわかりませんが、確定判決の証拠構造を重視すれば、上記の1の点は、昨年のエントリーで取り上げた記事にある捜査関係者の見方のように、「正体不明の男性(2人目)が、被害者の体内から採取された体液、現場に落ちていた陰毛の男性(4人目)と同一人物」と見る可能性も残り、その場合、おそらく上記の2の点は重視しない(痕跡が鑑定により出ないからといって受刑者が被害者と接触していないとはいえない、と見るでしょう)と思われますから、どういった判断に至るかには、予断を許さないものがあるように思います。