時効直前に不起訴=遺族、検審利用できず−専門家の大半、過失指摘−医療事故死

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2010122900387

複数の捜査関係者や地検が遺族側に開示した資料などによると、警視庁は約4年間ほとんど捜査しなかったが09年春に始め、同7月ごろ地検に報告。今年1月には、起訴に向け補充捜査を求められ、態勢を強化した。
医療過誤事件は、専門家の意見が立証の柱となる。警視庁が見解を求めた少なくとも8人の医師は全員、「最低限の検査をすれば救命できた」と担当医の過失を認めた。
ところが地検は3月中旬、一転して不起訴とする意向を警視庁に伝え、書類送検時の意見を「厳重処分」にしないよう要請。同庁は意見を変えず同29日に書類送検したが、地検は2日後「急性胃腸炎と考えた」などとした担当医の説明通りの理由で不起訴とした。警察の意見で最も重い厳重処分の事件が不起訴になるのは異例という。

警察がどの段階で事件として認知したかが不明ですが、記事を前提にすると、まず、「約4年間ほとんど捜査しなかった」という点が致命的でしょうね。業務上過失致死罪の公訴時効期間は5年ですから、そのうちの約4年間が空費されてしまっては、その後の捜査が窮屈なものになってしまいます。
記事では、「警察の意見で最も重い厳重処分の事件が不起訴になるのは異例」とあり、おそらく、これは警察関係者からの取材に基づくものと推測されますが、私の経験では、警察の意見はあくまで意見で、参考程度でしか見ていない、というのが従来の一般的な検察実務ではないかと思います。ただ、そうであるにもかかわらず、なぜ検察庁が警察に厳重処分意見を付けないように要請したのかが、よくわかりません。検察庁だけ悪者になりたくないという、最近の検察庁にありがちな、小狡い小役人根性がはたらいた可能性もあるでしょう。
もたもたした捜査で、検察審査会への申立もできず、被害者は浮かばれず、遺族も納得できず、ということになってしまいましたね。現在の捜査の実態がよく出た一例と言える気がします。