「打破」 「密室」可視化が不可避 虚偽自白の検証も可能
http://www.shimotsuke.co.jp/special/rasen/chapter9/20100614/336325
下野新聞の紙面では、今年の6月14日に掲載され、その当時、同新聞のウェブ上で検索してもヒットしなかった記憶でしたが、今日、机上や周囲を整理していたところ記事が出てきて、検索したところウェブ上で見られる状態になっていました。
元検事で東海大法科大学院教授の落合洋司弁護士(46)=東京弁護士会=は可視化の意義を強調する。
「密室の取調室では捜査側が圧倒的な力を持つ。誤った見込みを持った取調官に厳しく追及されると、苦しくてうその自白をしてしまう人もいる」
1989年から11年間にわたり名古屋地検や千葉地検で捜査検事を務めた落合弁護士。思い込みから容疑者を追及した結果、虚偽自白に追い込んでしまった苦い経験がある。
「後になって客観的な証拠が見つかり虚偽自白だと分かり、本人に謝罪して調書を取り直した。それ以来、一方的に責めるような取り調べは避けた」
捜査側にいた落合弁護士は可視化のデメリットも率直に認める。
「可視化すれば取調官がプライベートな話などを交えて、相手の情に訴えて自白を得るような取り調べ方が難しくなり、自白を得にくいケースが出てくることも想定される。司法取引など捜査側に『武器』を与えることも必要だろう」
欧米をはじめ韓国、台湾でも導入されている取り調べの可視化。しかし日本の捜査当局サイドには「検挙率が下がる」などと慎重論や反対論が根強い。
落合弁護士はこうした主張に理解を示しつつ、持論を訴える。
「より大きなメリットがある可視化を行わない理由はない。裁判員裁判でより分かりやすい立証が求められる今、客観的に供述過程を検証できる可視化は避けて通れない」
本ブログで繰り返し述べてきたところで、記事でも「持論」とされていますが、今週金曜日に、元厚労省局長の事件につき大阪地裁での判決が予定され無罪が予想されている中、こういった議論はさらに深められなければならないでしょう。
反検察、反捜査機関という猛烈な風が吹く中で、敢えて指摘しておく必要があると考えるのは、捜査における真相解明機能というものは重要なもので、今後、取調べの可視化が推し進められる中で、そういった機能が十分維持されるための措置、対策も同時に講じられるべきであるということです。新たな捜査モデルというものが構築されなければならず、それは、外国の制度を参考にしつつも、日本の国民性やカルチャーに即したものでなければならないでしょう。