アート作品「バッタもん」 ヴィトン社抗議で展示中止

http://www.asahi.com/national/update/0627/TKY201006260367.html

「バッタもん」はバッタの姿をした40センチほどの立体作品。ルイ・ヴィトンなど5社のブランドのロゴマークや柄が使われた9体が撤去された。4月15日から今月27日まで開催中の「ファッション奇譚」展に出品されていた。
ルイ・ヴィトン社は5月6日付で美術館と岡本さんに文書を送り、作品は商標権を侵害するコピー品で作られ「偽造品の販売という犯罪行為を肯定する」などとして展示中止を求めた。美術館を運営する神戸市産業振興財団は翌日、撤去を決定した。美術館の久保利洋二事務長は「展示自体は商標権の侵害とは言えないと考えている。だが、企業と争いながら展示を続けるのは本意ではない」と話す。

商標権の侵害といった違法性は認められないでしょうね。あくまで記事で紹介された範囲内でしかわかりませんが、ヴィトン社の文書でも、「偽造品の販売という犯罪行為を肯定する」という点に力点が置かれているという印象を受けます。
ヴィトン社は、バッグ等を人々に売りつけ金儲けしている営利会社であり金儲けを阻害するものには文句つけるのは当然のことで(それにしても今回の抗議は大人げないとは思いますがそれはともかく)、問題は、むしろ、違法性はないとしながら、唯々諾々と撤去を決めた美術館側の対応でしょう。芸術というものは、様々な権力(ヴィトン社もその業界の状況を考えると一種の権力でしょう)に、時に反対しつつも表現すべきものを表現するという性質を持っています。千利休豊臣秀吉と対立し死に追い込まれたことも、諸説ありますが芸術観の対立も原因であった可能性もあります。私自身の好みとしては、上記の記事にある「バッタもん」はいかがなものかと思いますが、様々な芸術、表現を世に伝えることが美術館の使命であり、抗議されたからと言って「企業と争いながら展示を続けるのは本意ではない」などという世俗的な理由で展示をやめてしまうようでは、芸術、表現を正しく保護し発展させるという役割を自ら放棄したに等しいのではないかと思います。