鞆港埋め立て・架橋問題:埋め立て、差し止め 景観へ影響重大−−広島地裁判決

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091001dde001040011000c.html

原告は、埋め立て対象の海に排水権を持つ人など163人(提訴後に4人死亡)。景観利益は法的保護の対象か▽計画は公水法や瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)の要件を満たしているか−−などが争点だった。
能勢裁判長は景観利益について、最高裁判決などをもとに、「法律上保護に値するもの」と認定。鞆の浦の景観を「歴史的、文化的価値を有する」などと評価し、「工事が完成した後に復元することはまず不可能」と指摘した。そのうえで、「埋め立てや架橋などは、瀬戸内法等が保護しようとしている景観を侵害するもので、政策判断は慎重になされるべきだが、よりどころとなる調査・検討が不十分、判断が不合理な場合は裁量権の逸脱にあたる」と判示。県などが主張する埋め立て・架橋による交通混雑解消の効果などについて「調査が不十分」「判断が不合理」と断じた。

私は人並み以上に歴史に興味を持っていて、歴史的、文化的景観の保護の必要性も理解していますが、そういった保護は、同時に、そこに住む人々の生活を不便にし悪影響を与えるということも認識する必要があると思います。そういった不便、悪影響ということは、景観の保護が国民全体の利益になる以上、国民全体の負担により補てんする、ということをすべきであり、そこは行政が適切に対応できるよう、制度を整備し予算措置も講じる必要があるでしょう。
この判決を契機に、単なる「景観か否か」といった単純なレベルで話が終わるのではなく、地元住民の生活のクオリティを維持、発展させつつ景観を守るためには何をすべきか、という建設的な議論へとつながることを期待したいですね。