<鹿児島県議選買収>やっと無実の身に…地検控訴断念

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070309-00000003-mai-soci

▽元東京地検検事の落合洋司弁護士の話 検察が「証拠の吟味が不十分だった」などと率直に認めるのは珍しいが、それだけ問題のある捜査だったということだろう。地検としては警察の事件相談を受けた時などいくつかの段階で引き返すチャンスがあったと思う。地検幹部が状況をきちんとチェックし、捜査の泥沼化を食い止める責任があったのではないか。選挙違反などの知能犯事件を的確に判断する目を持った検事をどう育成していくかが問われているし、今回の事件はよい教訓になると思う。

昨日の夕方、電話で取材を受け、それが凝縮されて上記のコメントになっています。私の場合、検察庁で働いていた経験があるので、こういった事件があると、どうしても検察庁に対する目が厳しくなります。
電話取材の際にも話しましたが、この事件で、警察で作成された供述調書をほとんど丸写しにしながら検察官調書を作成する手間暇を、被疑者の声に耳を傾け事件自体に疑問を持つ、という方向に振り向けた上、「やめる勇気」を出していれば、このような大失態を犯さず、多くの人を不幸にすることもなかったでしょう。
法務省最高検としても、この事件について、法務総合研究所あたりで専従チームでも作り、関係者からの聞き取りなどを徹底的に行い、過誤の原因がどこにあり、どうすれば避けられたのか、といったことを検証して資料を作成し、全国の捜査官が参考にできるようにすべきだと思います。そうしないと、今後も同じ過ちを繰り返すことになりかねないでしょう。
なお、余談ですが、ひたすら謝っている鹿児島地検の水沼次席検事も、人違い冤罪事件

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070120#1169257299

で、やはり、ひたすら謝っている富山地検の佐野次席検事も、私と同期任官で、私自身、弁護士にならなければ、富山や鹿児島で国民の皆様にひたすら謝る立場になっていたかもしれません。人生いろいろですね。
電話取材の記者には、水沼次席検事に、良い仕事をして、失われてしまった鹿児島県民の信頼を取り戻すべく頑張ってほしい、と私が言っていたと伝えてほしい、と言いましたが、仕事の失敗は仕事で取り戻すしかないので、めげずに頑張ってほしいと思います。

追記:

警察庁が綿密な捜査徹底を通達 鹿児島公選法事件で
http://www.asahi.com/national/update/0309/TKY200703090021.html

漆間巌長官は同日の記者会見で「全体を見渡して指揮するのが本部長の役割。事件を見極めて引くなら引く、更に詰めが必要なら詰めるよう言える資質がないと失格だ」と語った。

警察庁長官が指摘するとおりですが、言うは易く行うは難し、ということでしょう。
私は、戦史が好きで、そういったジャンルの本もよく読むほうですが、過去の数々の陸戦、海戦等を見ていると、指揮官の判断が、戦局の行方を大きく左右した、というケースがかなりあります。ちょっとした判断が、多くの人を救いもすれば不幸にもします。
それだけに、人の上に立つ立場にある者の責任は重大と言えるでしょう。