点滴混入事件、見え隠れする「代理ミュンヒハウゼン症候群」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090124-00000072-yom-soci

この事件については、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20081225#1230168557

でも少しコメントしましたが、本格的に代理ミュンヒハウゼン症候群が問題になっていますね。

容疑者の供述から、MSBP罹患(りかん)を疑う西沢哲(さとる)・山梨県立大教授(臨床心理学)は「親は命を投げ出しても子を守るとの思い込みがあり、医師でも病気の知識がないとだまされる」と指摘。長谷川博一・東海学院大教授(臨床心理学)も「虐待の痕跡がないと気付くのは困難」と話す。
医療関係者によると、MSBPの症例は1977年、英国で初めて報告された。国内では年間十数例しかなく、これまで、母親が自分の下剤を入院中の乳児に飲ませた例や点滴のチューブを抜いたケースなどが報告されている。
奈良市では00年、長女にぜんそく治療薬を混ぜた茶などを飲ませたとして殺人未遂罪に問われた女は、起訴前の精神鑑定で罹患の可能性を指摘された。しかし、判決は完全責任能力を認定し実刑を言い渡した。

従来の刑事責任能力に関する考え方に照らせば、完全責任能力が認められそうな印象は受けますが、この症候群の特質や、本件の被疑者が犯行に及ぶにあたっての心理状況が解明されないと、刑事責任の正確な評価が困難で、一種の情状鑑定の側面からも、鑑定を避けて通ることはできないでしょう。
事件になる前に、未然に発見して犠牲が出るのを防ぐことこそ重要、と思いますが、専門家が指摘するように、周囲が気づくのは困難ということで、なかなか厄介なものです。ただ、こういったケースが、数は少なくても確実に存在するということは、今後、徐々に浸透させて行くべきでしょう。