判決要旨 マンションへの政党ビラ配布

http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2007121101000527_Detail.html

以前、1審の無罪判決について、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060828#1156731480

とコメントしましたが、やはり、控訴審では有罪になりましたね。こういったパターンが、裁判員が関与する事件でも繰り返されるのではないか、という予感がますます強くなってきます。
控訴審判決の最大のポイントは、おそらく、要旨の中にある

管理組合の理事会は、区の公報に限り集合ポストへの投函を認め、そのほかは禁止と決定。玄関ホールの掲示板にA4判、B4判の張り紙が掲示されている。
弁護人は、政治ビラは政治的表現の自由に基づき、居住者の知る権利の対象にもなることから、投函の禁止は、住民の総意や管理組合総会の決定が必要と主張するが、民間の分譲マンションであれば、区分所有者らが手続きを含め自由に決定する権利を有することは明らかだ。住民の異論、苦情はなく、理事会の決定は住民の総意に沿うものと認められる。

と思われ、管理者による立ち入り禁止の意思が明確に存在し、かつ、表示もされている以上、それに反する立ち入り行為は「侵入」にあたると、ざっくりと判断したものと思われます。
有罪とは言え、罰金5万円という結論であり、起訴価値という意味では、無いに等しいと言っても過言ではなく、なぜ、このような起訴がされる必要があったのか、起訴猶予制度というものは何のために存在するのか、という疑問は、拭い去られることなく残っていると思います。
本来的に、その運営や処分の在り方等に、民意や健全な社会常識を反映させることができず、最近の「国策捜査」を巡る議論にも現れているように、独善的に暴走しやすい体質を持つ検察庁の危険性、といったことが、改めて問われる必要があり、単に、テレビに出たり本を書いたりして騒ぐだけでなく、法改正等によるドラスティックな改革、といったことも真剣に検討されなければならないのではないか、という議論も必要でしょう。
私は、世の中の片隅で生きるしがない弁護士で、どこかのタレント弁護士のように政治家になる色気も野心もないので、今後とも世の中を変える力はありませんが、そのような力がある人、これから持つ人には、是非、検討していただきたいと思います。

追記(平成23年3月18日):

本件は、最高裁第二小法廷平成21年11月30日判決で上告棄却となりましたが、判例時報2090号149頁以下に掲載されていました。
判決では、2審と同様の判断が示され、法益侵害の程度が極めて軽微とは言えず、他に犯罪成立を阻却すべき事情は認められない、私生活の平穏を害する態様の表現の自由は制約されてもやむを得ないとして、上告が棄却されています。
問題点としては、既に2審判決に対して上記のように指摘したようなものになると思います。

政党ビラ配り逆転有罪 『高裁に憲法ないのか』 被告僧侶怒りあらわ
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007121290070900.html

この記事では、「判決は未決拘置日数(二十一日間)を一日五千円に換算して刑に参入することを認めており、すでに罰金五万円は払い終えた計算になる。」とありますが、罰金刑を宣告する際、未決勾留日数を刑に算入する、というのは、通常はしないことで(体刑の場合は、通常、よく行われますが)、裁判所が、よほど「起訴価値」のない事件、と見たのだろう、ということが、この点からも読み取れるように思います。
東京高検次席検事は、「法解釈と社会常識に照らし、極めて妥当かつ常識的な判決」などと、うそぶいているようですが、起訴の在り方として、「極めて妥当かつ常識的」かどうかは、判決結果を踏まえ、胸に手を当ててよく考えてみるべきではないか、と思います。

追記(平成23年