元長官の逮捕、決め手は仲介元銀行員の供述

http://www.asahi.com/national/update/0708/TKY200707080221.html

特捜部は、緒方元長官らが総連側から不動産をだまし取ったとして逮捕した。当初は不動産の仮装売買で虚偽の移転登記を行い、強制執行妨害を図った疑いがあるとみて捜査。

それが、「仲介元銀行員」の供述が決め手になって、詐欺へと大きく舵を切った、ということですが、この種事件について見る目があればあるほど、「?」という疑問符が大きくつくでしょうね。

検察内部では、こうした構図について「真相が見えない」という声も出ている。ある幹部は「所有権を移させた後に転売して逃げたのならわかるが、(この経緯では)詐欺の動機の説明がつきにくい」ともらした。
特捜部は、緒方元長官らが同時期に東京・六本木のビル転売の資金に窮していたことや、元長官が数億円の負債の返済資金に困っていたことが動機になった可能性があるとみて、さらに解明を進めている。

現在の検察ストーリーでは、出資者がいない、代金が支払えない、ということで、早晩、受け取った仲介手数料名目の金は返さなければならない、登記も戻し、多額の不動産取得税も納付しなければならない、という羽目に陥って、ますます資金繰りが苦しくなる、という、一種の「自殺行為」になってしまうでしょう。なぜ、そのような愚かなことをする必要があるのか、という大きな疑問が、同時に、この検察ストーリーの致命的な欠点ではないか、と思います。
先日、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070705#1183595073

で、

朝鮮総連側としては、代金は支払われない、それに伴って家賃も支払わなくて良い、といった状態で推移すれば、仲介手数料等名目のの4億数千万円(報道によると)で、引き続き施設を利用し続けることができ、かなり大きなメリットがあったということになる、ということを(実際にそうかどうかは今後の解明に待つとして)見逃すべきではないと思います。

とコメントしましたが、この事件の本筋を「仮装売買」(犯罪にまでなるかどうかはともかく)と見れば、関わった当事者それぞれにメリットがある、魅力的な話になり、ストーリーとして無理なくすっきりと頭に入ってきます。
つまり、

1 朝鮮総連は、4億数千万円程度の負担で、引き続き施設が利用できる
2 元日弁連会長は顔が立つ
3 元長官らは、元長官の名前をフルに利用するだけで、4億数千万円が手に入り山分けできる(もちろん、返す必要はない)

ということで、元長官の名前で事を進めればうまく行く、と、大きく読み違えたことが致命的であったとはいえ、当事者には当事者なりの目論見があったと見るべきでしょう。
元長官は、この問題が発覚した後の初期の記者会見で、善意からの行為であったと釈明していましたが、大きく読み違えたとはいえ、朝鮮総連側に恩を売るとともに自らも大きく利益を取得できる、おいしい話と考えて飛びついた可能性があるでしょう。
私自身は、現在の検察ストーリーには、そもそも、かなり無理があると感じていて、今後の刑事処分の行方に注目しています。