民事法に対する検事の素養

<前夫の子>届け出女性を不実記載で「誤って」起訴 地検
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070216#1171630010

については、

http://d.hatena.ne.jp/okaguchik/20070221/p4
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20070217/1171633214
http://www.yabelab.net/blog/2007/02/17-003405.php
http://blog.goo.ne.jp/9605-sak/e/3a817237cac3e3d1ba12dbf48911ce3f
http://danblog.cocolog-nifty.com/index/2007/02/post_e154.html

等々、法律系のブログでもかなり話題になっています。
私自身、11年余り、検察庁で捜査・公判の現場にいたので、ある程度実情がわかる立場にいます。上記のような民法の規定は、司法試験に合格した人なら誰でも知っているはずですが、検事として刑事事件ばかり取り扱っていると、民事法に関する知識は、次第に薄れてくるものです。それは、ある程度やむを得ないと思います。
ただ、必要であると思われるのは、薄れてきてしまったとはいえ、刑事事件の処理等のため、民事法に関する知識が必要になる、という場面は、確実に存在し、そういった場面に遭遇したら、その都度、必要な調査を行わなければならない、ということだと思います。
例えば、横領、背任等のいわゆる知能犯事件では、民事上の紛争というものがまずあって、その中で刑事事件として問題になってきているものがある、というケースが少なくありませんが、背景にある民事上の紛争というものがきちんと理解できていなければ、刑事事件として、起訴するにしても不起訴にするにしても、的確な処理はできないでしょう。わからなければ、本を読む、関係者(代理人の弁護士を含む)に聞いてみる、等々、いろいろな方法で調査してみるのは当然のことです。
検事も、司法試験に合格する程度の民事法に関する素養(その後の司法修習も含め)はあるわけですから、面倒がらずに調査を行えば、当たり前のことは当たり前に理解できるはずです。
昔読んだ、

特捜検事ノート (中公文庫)

特捜検事ノート (中公文庫)

にも、検事は民事法に関する勉強を怠ってはならない、ということが書いてあった記憶がありますが、今回の不祥事は、昔から繰り返し戒めとして言われてきたことを、改めて思い起こさせるものであった、と言えると思います。