ロンドンにおける見学(5日目)

5日目(金曜日)。いよいよ最終日です。午前中は早めに起き、朝食を済ませた後、ロンドンから列車で1時間弱程度の距離にある、ある女子刑務所を訪問しました。自然に恵まれた環境の中を、駅から20分ほど歩いて刑務所に到着。のどかな環境の中にあって、なかなか良い雰囲気でした。英国の刑務所では、開放度に応じて、クローズド、セミオープン、オープンの3つのタイプがあるとのことでしたが、ここはクローズドになるとのことでした。ただ、毎日30名の受刑者が、刑務所を出てコミュニティの中で各種作業に従事しているということで、完全にクローズドな刑務所ではないようでした。成人だけでなく、15才から18才までの少年も16名まで収容可能とのことで、少年の収容施設も見学しましたが、房は清潔でシャワーもついており、房がある建物内に各種訓練等ができる部屋もあって、かなりの充実度であると思いました。
女子刑務所ということで、昨日訪問した刑務所よりは全体として柔らかい感じの雰囲気になっており、建物も木造であったりして、圧迫感、威圧感を与えないように工夫されていると感じました。受刑者の中から、「インサイダー」と呼ばれる、一種のお世話係が指名されて、後輩受刑者の相談に乗ったりする仕組みになっている上、各受刑者に、必要に応じて相談等ができる職員が割り当てられていて、工夫していると思いました。
ここでも、受刑者の表情や態度が明るく、見学中の我々に気軽に声をかけたり、案内してくれている職員と笑顔で言葉を交わすなど、日本の刑務所とはかなり雰囲気が異なると思いました。刑務所内の掲示板に、不服や苦情がある場合の申立について、チャートを使ったわかりやすい説明書が張り出されていたことが印象的でした。所長の説明によると、自殺しようとする受刑者が少なくないので、自殺防止に注意しているということで、やはり、いろいろな問題を抱える受刑者を収容する施設は常に気が抜けない状態に置かれていると感じました。
午後は、内務省を訪問し、刑務所問題も担当する高官からお話をうかがうことができました。刑務所における不服や苦情の申立制度改善を計画していることや、英国の刑務所が抱えている諸問題について、現状や意見が述べられ、なかなか難しい点もありましたが、見学の最後でこのようなお話を聞くことができ参考になったと思いました。
昨日までに訪問した先について、高官から、かなり辛辣な批判が出たところもあって、制度改革へ向けての思いは共通していても、方法論で鋭い対立があり、外部からの訪問者に向かっても遠慮無く非難するものだと思い、印象深く感じました。
5日間の見学でしたが、英国の制度について知識がほとんどなかった私にとって、見るもの聞くもの、すべてが勉強になるといった状態であったと言っても過言でなく、ここで得た知識、経験を元に、今後、さらに勉強したいと思いつつ、帰国の途につこうとしています。