ロンドンにおける見学(2日目)

見学2日目(火曜日)。午前中は、ICVA(the Independent Custody Visiting Association)
http://www.icva.org.uk/
の担当者に案内していただき、ロンドン市内のある警察署を見学しました。ICVAの組織や活動等については、
http://www.icva.org.uk/site/welcome/index.htm
で紹介されていますが、この組織に登録した民間人のビジターが、警察署を訪れて、被収容者への処遇に問題がないかどうかチェックするという活動が行われています。案内してくれたのは、テレビや映画に出てくるミス・マープルのような感じの、やや年配の女性で、地元に住んでいてビジターを務めているとのことでした。その女性の説明では、設立後、まだ十数年程度の歴史しかなく、知名度が十分とは言えず、警察によっては訪問自体を拒否されることもあり粘り強く説得する必要がある場合もある、ビジターに若年者や少数民族出身者が少ないので、そういった人々もビジターになってもらえるように努力している、ということでした。ビジターになると、研修プログラムも用意され、任期は3年で、更新も可能とのことでした。
警察の留置担当官からも説明を聞くことができ、警察署での留置は原則24時間で、例外として36時間までの留置が行われる場合もあるが、その後は、釈放されなければ拘置施設へ身柄が移される、現在、拘置施設に収容されている者を警察署に収容できないか、という動きがあるが、警察署は24時間ないし36時間を超えた収容には適していないのではないかと考えている、といった説明がありました。私が、「日本では、一つの事件で、最大、23日間の逮捕・勾留が可能で、複数の事件により1年以上もの期間、警察留置場で身柄が拘束されることもある。」と言うと、ICVAの担当者や警察の留置担当官は驚いていました。
時間の関係で、制度についての詳しい説明までは聞けませんでしたが、警察の留置担当官は、採用時から、捜査担当官とは別ルートの採用になっていて、日本とは比べものにならないくらい、捜査と留置が分離しているようでした。留置担当官の話では、逮捕に問題があると判断された場合、留置担当官が留置を拒否することもあるということで、これは、日本では考えられないことでしょう。
警察の留置場内も、支障がない範囲内で見学しましたが、監視カメラで留置場内を録画し、それをきちんと保存するシステムになっていることが印象的でした。
日本でも、刑務所に対し外部から監視の目が入る制度が実施されようとしていますが、英国の制度には見習うべき点が多いと感じました。
その後、お昼過ぎから1時間ほど、1日目の午前中に行ったICPS(刑務所研究のための国際センター)へ再び行き、元のChief Inspector of Prisons for England and Walesのお話をうかがいました。陸軍出身で、現在は上院議員爵位を持つ貴族)とのことでした。この地位については、
http://en.wikipedia.org/wiki/Her_Majesty%27s_Chief_Inspector_of_Prisons
が参考になります。こういった職を設け、これだけの重みのある人物を任命して刑務所の監督を行っているだけでも、英国は日本の遙かに先を進んでいると感じました。お話の中で、「刑務所の問題は政治家による政争の対象になるべきではない。」という言葉が、特に印象的でした。