接見訴訟:「設備なくても被疑者と面会を」最高裁が初判断

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20050420k0000m040118000c.html

指宿教授、町村教授のブログでも取り上げられていました。最高裁のサイトでもアップされています。

http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/bd8754580eaa332d49256fe800215d08?OpenDocument

昔、私がある地検で勤務していた時、地検で身柄事件の被疑者に接見したいという弁護人がいましたが、その地検には接見室がありませんでした(古い建物でした)。断ろうと思えば断ることもできましたが、すぐに終わるので何とか、と頼まれたので、「先生、私の部屋でも構わないですか?警察官も私もいますけど。」と聞いたところ、構わないということだったので、押送の警察官に被疑者を私の部屋まで連れてきてもらって、短時間、接見してもらいました。話の内容は覚えていませんが、ごく事務的なことで、2,3分程度で終わったと思います。弁護人からはお礼を言われましたが、押送の警察官は、異例なことで非常に気になったようで、「検事さん、大丈夫ですか?」などと心配していました。私は、「弁護人に異存がないし大丈夫だよ。」と言っていた記憶です。
今回の判例で、最高裁は、

検察官が上記の設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず,弁護人等がなお検察庁の庁舎内における即時の接見を求め,即時に接見をする必要性が認められる場合には,検察官は,例えば立会人の居る部屋での短時間の「接見」などのように,いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(以下,便宜「面会接見」という。)であってもよいかどうかという点につき,弁護人等の意向を確かめ,弁護人等がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは,面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務があると解するのが相当である。そうすると,検察官が現に被疑者を取調べ中である場合や,間近い時に取調べをする確実な予定があって弁護人等の申出に沿った接見を認めたのでは取調べが予定どおり開始できなくなるおそれがある場合など,捜査に顕著な支障が生ずる場合は格別,そのような場合ではないのに,検察官が,上記のような即時に接見をする必要性の認められる接見の申出に対し,上記のような特別の配慮をすることを怠り,何らの措置を執らなかったときは,検察官の当該不作為は違法になると解すべきである。

としていますが、私が行った上記のような取り扱いは、この最高裁判例を先取りしたものと言えるな、と思った次第です(別に先見の明を誇ったりしているわけではありません)。
この判例が実務に与える影響は、かなり大きいでしょう。上記の毎日のニュースでは、

日本弁護士連合会の04年1月調査によると、接見室のある地検は3分の1程度で、判決は実務に影響を与えそうだ。

とあり、今後は、「設備がないから接見できない。」という硬直的、形式的な対応は違法とされる恐れがあるので、接見の申し出を受けた検察官は、具体的状況や弁護人の希望を踏まえて、できる範囲内で接見(最高裁が言うところの「面会接見」)の便宜を図って行く必要があります。