「検察官を翻弄しまくったoffice氏の奮闘」の感想

http://blog.goo.ne.jp/hwj-sasaki/e/cf7e7ee952cc871948b78f3a1206a6b4

で、ACCS関係の不正アクセス事件の、被告人質問の様子(一部であるが)が紹介されていた。どうも、公判立会検察官の質問のレベルがかなり低く、裁判長に叱責され、傍聴席の失笑をかった面があったようである。私も、こういう被告人質問では、検察官にとってマイナス効果しかないのでは、と感じた。
検察官の被告人質問というものが、どうあるべきかは、なかなか難しい問題である。私も、検事をやっている間に、公判に専従していた期間が通算で1年9か月ほどあるが、難しい事件であればあるほど、被告人質問のやり方も難しかった。
検事の取調室であれば、文字通り「密室」であり、時間も、健康状態等に配慮しつつ食事や用便をきちんをさせ、非常識なほど深夜にわたらなければ、ある程度自由に設定できる。同じ点を繰り返し聞くこともできるし、相手の態度が無礼であれば、たしなめたり、説諭したりといったことも可能である。どういう理論をとるにせよ、実際の取り調べは、取り調べる側と取り調べられる側の上下関係というものがついて回る。
これに対して、法廷での被告人質問は、公開されており、時間も制約され、重複質問は許されないし、被告人の態度が生意気だなどと検察官が感じても、あくまで「対等な当事者」である以上、叱ったり、といったことは、本来、できない(法廷の秩序を維持するのは裁判所の専権である)。
そういう中で、検察官の被告人質問というものは、できる限り、検察官の立証に役立つものを引き出す方向で行わなければならないのである。
その意味で、上記のブログで紹介された検察官による被告人質問は、検察官の被告人質問の限界や、限界の中で何ができ、何をすべきかといったことに関する問題意識が欠如していると思う。
能力に問題があるのか、公判立会に慣れていないのか、その辺は不明であるが、謙虚に自らの公判立会を見直して改善する必要があるのではないかと感じた次第である。